歪んだ月が愛しくて2

ヒト科の野良猫は猫使い




立夏Side





「汐っ」

「はい!」



カナとの再会から数日が経過した頃、俺達はグラウンドで体育祭に向けて練習に励んでいた。
主な練習は最終種目のクラス別リレーのスタートダッシュとバトンパスだ。



「山本!」

「誰が山本だ!?」



汐からバトンを受け取った彼は、クラスメイトの山本…じゃなくて山田。
その彼を含めた俺、未空、頼稀、汐の5人が今年の1年C組のリレー選手に選ばれた。



「未空!」

「任せろ山口!」

「だから俺は山田だって!」



もうあだ名みたいになってる。

山田には悪いけど、皆が適当なこと言い過ぎてもうどれが本当の名前か分からなくなって来た。



「チンタラしてんじゃないよ!本番だと思って真剣にやれー!」

「怪我しないようにね、後が面倒だから」



その傍らでみっちゃんと遊馬が声援を送る。



……声援か?



因みに葵は友達の誕生日祝いをするために外泊中だ。



「リカ!」



リレーの順番は、頼稀→汐→山田→未空→俺。
つまり俺がアンカーなんだが、俺はこの順番が不満で仕方ない。
そんな気持ちを振り払うように、軽く100メートルだけ走って皆の元に戻った。



「ふぅ…」



100メートルくらいではストレス発散にもならないか。



「お疲れさん」

「お疲れ!」

「リカお帰りー!」

「ただいま。未空足速いね。未空がアンカーやった方がいいんじゃない?」

「ダメ!アンカーは絶対にリカなの!」

「ああ、逃がさねぇぞ」

「いや、別に逃げるつもりはないけど」

「そうだよ!藤岡くんがアンカーなのはクラス全員の意向なんだから!」

「いい加減覚悟決めなよ」

「か、覚悟って…」



そこまで?



「はい、良かったらタオル使って」

「ありがとう」



全然汗掻けなかったが、遊馬から手渡されたタオルを受け取って首に掛けた。



「やっぱり藤岡くんは速いな。俺陸部なのに全然勝てる気がしないよ」

「そんなことないよ。山田だって十分速いじゃん」

「いんや!山本なんかよりも断然藤岡くんの方が速いから!」

「そう?」

「しかもフォームも綺麗だしね」

「てか、山口のくせに何リカにヤマダって呼ばれてるの?山口のくせに」

「だから山本でも山口でもねぇから!」



山口のくせにって。

それ世界中のヤマグチさんに対して失礼だから。


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