歪んだ月が愛しくて2
「もう、どこ行ったんだよ」
俺は子猫を探して裏庭を彷徨っていた。
ここまで奥に入ったのは新歓以来だ。
頼稀達から「迷子にあるから裏庭には行くな」と言われていたためあれ以来裏庭に来ることはなかった。
特に裏庭に用があるわけじゃないから今までは困らなかったが、まさかこんな風に子猫を探す羽目になるんだったら道くらい覚えておけば良かったと今になって後悔した。
「にゃー」
聞こえた。
きっとこの先にいる。
足を速めて生い茂った草むらを踏み荒らし更に奥へと進むと。
「……見つけた」
「にゃあ」
俺の姿を見つけた子猫はゆっくりと俺の足元まで歩いて尻尾を振る。
「えっと、こう言う時は…」
『撫でてやれよ』
ゴクッと息を飲み、意を決して子猫に手を伸ばす。
俺の手が子猫の背中に触れると、子猫は甲高い声で短く鳴き声を上げて擦り寄って来た。
「……久しぶり。俺のこと覚えてたんだ」
「にゃあ」
「この間はごめんな、怖い思いさせて。でも怪我しなくて良かった。会長が守ってくれたお陰だな」
「にゃー」
すると子猫は気持ちよさそうに目を細めてお尻を突き出すような格好をする。
「え、何ケツ?ケツがどうし…」
「煩ぇ」
俺達しかいないと思っていた空間に突如低い声が割って入る。
そのドスの効いた声に勢い良く振り返ると、そこには牙を剥いた獣が鋭い眼光で俺を捕らえていた。
「、」
一瞬、呼吸の仕方が分からなかった。
俺を冷たく射抜いた瞳があの色で思わず言葉を失った。
「……誰だ貴様?何故ここにいる?」
アンタこそ誰だよ。
いつもの俺ならそう言い返してたが今は上手く言葉が出て来ない。
その瞳が。その色が。
俺を過去へと引き摺り込もうとする。
「答えろ」
でもよく見るとその瞳は紅色だけではなかった。
右目が紅で、左目が蒼。
それはまるで―――。