歪んだ月が愛しくて2



その姿に思わず言葉を失った。



「何だ?」

「………笑った」

「あ?」

「先輩も笑えるんだね。さっきから眉間に皺寄せてるからそう言う顔しか出来ないのかと思った」

「………」

「でも笑ってる方がいいよ。折角のイケメンが勿体ないからね」



あ、またムスッとした。
折角綺麗な顔してるのに本当勿体ない。
イケメンの無駄遣いってこう言うことだな。



「初対面のくせに随分な言い草だな」



……そうだった。



「ごめん、先輩なのにタメ口聞いて」



確かに先輩とは初対面だ。
それなのに見ず知らずの後輩に生意気な口聞かれたら誰だっていい気分はしないだろう。先輩が不快に思うのも無理はない。



「違う」

「違うって、何が…」



そう言い掛けた時、遠くの方から声が聞こえた。



「立夏!どこにいるー!」

「リカー!どこー!返事をして出て来なさーい!」



俺の耳に届いたのは頼稀と未空の声だった。
しかもその声色は何だか焦っているように聞こえた。



あの2人、絶対俺のこと迷子扱いしてるな。

確かに迷子常習者だけどさ、認めたくないけど。



段々と未空達の声が大きくなるに連れてこちらに近付いて来ていることが分かる。
すると先輩は俺に背を向けて再び歩き出した。



「先輩、どこ行くの?」

「……先輩じゃない」

「え、」



先輩じゃない?

え、じゃあ何?

ヒト科の野良猫?それとも猫使い?



瑞樹(みずき)だ」

「み、ずき…?」



俺はその名前を無意識に復唱して小さくなる後ろ姿を静かに見送った。
その直後、背後から未空と頼稀が現れた。



「あ、リカ発見!」

「お前こんなところにいたのかよ。捜したぞ」

「未空、頼稀………あっ」



未空と頼稀の登場に白は驚いたように「にゃあ!」と声を上げて瑞稀の後を追ってどこかに行ってしまった。



「猫?……もしかして、リカ猫と遊んでたの?」

「ガキか」



誰がガキだ。



「別に遊んでたわけじゃないよ」

「じゃあこんなところで何してたの?」

「それは、ちょっと心配で…」

「心配?……あ、もしかしてあの猫って前にリカが庇った猫?」

「あー…(そう言うテイにしてたんだっけ?)」



庇ったわけじゃない。

ただ足が竦んで動けなかった、それだけだ。



「それで様子を見に来たと?」

「うん。さっき偶々見掛けて…、それで後を追い掛けたらここまで来ちゃった」

「そうだったんだ。でももう勝手にいなくならないでね。一言言ってくれないと俺達だって心配するよ」

「ごめん」

「全くだ」

「だからごめんって。次からは気を付けるよ」

「どうだか」



始まったよ、頼稀のオカンモード。

こうなる前にとっとと帰れば良かった。失敗した。


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