歪んだ月が愛しくて2
陽嗣先輩に出された宿題はまだ完全には解けていない。
その代わりに腹を括る覚悟は出来た。
どうせ失うくらいなら何も望まないと決めていた、つい最近の俺に別れを告げる。
どんな言い訳を繰り返したところでダメだった。
瞼の裏に浮かぶ彼等はいつだって俺に手を差し伸べて受け入れてくれたから。
『立夏は、俺等の仲間だ』
だから、俺はもう一度ここにいたいと願ってしまったんだ。
「でも、まだ皆と一緒にいたい。未空の親友でいたいんだ」
「っ、」
儚い、夢かもしれない。
でもこの夢が醒めるまでは、どうか…。
次の瞬間、未空の両腕に包まれた。
まるで離さないと言わんばかりに強く強く抱き締められた。
「み、く」
「……俺、リカに頼る必要がないって言われて、本当にスゲー悲しかった」
「……うん、ごめん」
「何でそんなこと言うんだろうって思って、俺なりに色々考えたんだけど全然分かんなくて」
「ごめん」
「あはは、もうリカってば謝り過ぎ。でもって考えても分かんなかったから俺の方からリカに頼ることに決めました。だから覚悟しててね。リカが嫌がっても地獄の果てまで付き纏うから」
「未空…」
未空は「だからもう謝らないで」と言って身体を離した。
「我慢しなくていいんだよ」
『偶には弱音吐いたって、我儘言ったっていい。泣きたい時には泣けばいいんだ。幻滅なんかしねぇよ』
「もう諦めないで。リカを否定する人はここにはいないよ」
「………」
ああ、会長と同じだ。
そうやって未空も、俺の心を救ってくれるんだね。
「似た者同士」
「え、何が?」
「……ううん。何でもない」
ありがとう。
こんな俺のことを親友だと言ってくれて。
『大丈夫だ』
本当、魔法みたいな言葉。
少しだけ、ほんの少しだけ、その言葉を糧に生きてみたいと思った。
未空の親友だと胸を張って言いたいから。
「未空」
「ん?」
過去の罪から目を背けるつもりはない。
あの人達を死に追いやったことも、公平を傷付けたことも、決して忘れない。
忘れるものか。
でも…、
「大好きだ!」
今だけは、この時間を大切にしたい。