歪んだ月が愛しくて2



「もう!ついさっきのことなのに何で忘れちゃうかな!」

「いや、覚えてるけど」

「じゃあ好き?大好き?愛してる?」

「愛してるとは言ってないよね」

「あれ、そうだっけ?」



不意に背中の重みが消えた。
それと同時に未空の声が遠くの方で聞こえた。



「いい加減にしろクソ猿。いつまでそうしてるつもりだ」

「いつまでも。羨ましいからって邪魔すんなよ」

「誰が羨むか。目の前で鬱陶しいって言ってんだよ」

「男の嫉妬は醜いよ」

「その言葉、そっくりそのまま返してやる」



どうやら会長は未空の襟首を後ろから掴んで俺から遠ざけてくれたようだ。
でもそれで2人が揉めてたら意味がないと思うのは俺だけだろうか。



「もしかして…」



すると未空は会長の瞳をじっと見つめて、可笑しなことを言い出した。



「みーこも言われたいの?リカに大好きって」

「あ?」



いや、それはないでしょう。



「はっはーん。そう言うことか。やっぱりみーこはムッツリだね」

「誰がムッツリだ。適当なこと言ってんじゃねぇよ」

「でも残念でした。リカが大好きなのは俺だけなんですぅ〜」

「人の話を聞け」



おいおい、誰が未空だけって言ったよ。
確かに未空のことは好きだけど、未空が言うと何か意味が違うような………てか、違う意味って何だよ。
自分で言って置いてあれだけどラブじゃなくてライクだからね。そこ間違えないでね。
ああ、ここの空気に汚染されてる自分の思考が嫌だ。嫌過ぎる。



「おい」



不機嫌そうな声が俺を現実へと連れ戻す。



「……何?」



現実に戻してくれたのはいいが、何で不機嫌?



「猿のことが好きなのか?」

「………は?」



ポカンとした顔で聞き返すと、会長はいつになく真剣な顔で俺を見ていた。



「好きだけど」



ピクッと、会長の頬が引き攣る。



でもラブじゃない。
あくまでライクの意味で未空のことが好きだ。


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