歪んだ月が愛しくて2
「けど?その続きは?」
「……別に変な意味じゃないよ」
「変な意味って何だよ?」
「だから友達として好きってこと。何度も言わせんなよ」
今日の会長はやけにしつこい。
いつもは無愛想で素っ気ないのに何だか変な感じだ。
まあ、無愛想なのはいつもと変わらないけど。
「ならいい」
「は?」
すると会長は俺の言葉に気を良くしたのか満足げに口元を緩めて執務机の上にある山積みの書類に目を通し始めた。
「何がいいんだよ…」
勝手に怒って、勝手に納得して。
意味が分からない。
「てか仕事溜め過ぎじゃない?」
「溜めてねぇよ。効率良く処理してるだけだ」
「どこが?どっちかと言うと効率下げてるでしょう」
「ちまちま処理すんのが面倒なんだよ。どうせなら一遍に持って来い」
「それは仕方なくない?てかそのちまちました面倒なもんを一個ずつ処理すんのが上の役目だろう?」
「ハッ、俺に意見するとは随分偉くなったもんだな。パシリのくせに女房気取りか?」
「誰が女房だ。身体壊したら元も子もないって言ってんだよ」
てかパシリでもねぇよ。
「この程度で壊れるかよ」
「はぁ、人が折角心配してるのに…」
素直に気を付けるって言えばいいだけじゃん。
それなのに一言も二言も余計なんだよ。
「人の心配してる場合かよ」
「何それ?自分の心配しろってこと?」
「言いたいことは言えたのか?」
「……あ」
すぐに分かった。
会長が何を言いたいのか。
「なん、で…」
「弟と向き合うと決めたのはお前自身だが俺も焚き付けたようなもんだからな」
「……もしかして、心配してくれてたの?」
「フン、寝言は寝て言え」
「………」
本当、素直じゃない。
「それに、俺だけじゃねぇよ」
クイッと、会長は顎で未空達を示す。
「良かったね」
「未空…」
『関係ないけどリカは俺達の仲間だから関係なくないの!……あれ、どっちだ?』
『兎に角!自分のことだけじゃなくてリカの意見も聞いてあげなよ!』
未空はいつも優しかった。
初めて出会った時からずっと、ずっと。
こんな俺のことを親友と言ってくれた時も凄く嬉しかったよ。
だから…、
「……聞いて、欲しいことがあるんだ」
だから俺も未空が自慢に思ってくれるような、そんな親友になりたい。
「俺に?」
「うん。陽嗣先輩と九澄先輩にも」
会長以外の3人は自然と顔を付き合わせて互いに首を傾げた。
「俺達も?」
「……いいんですか?」
「はい。お願いします」
これから話すことは過去の断片。
歪な記憶の中に眠るほんの一部に過ぎない。