歪んだ月が愛しくて2
「会長には話したけど、俺…、カナとは上手くいってなかったんだ」
「……うん。何となくそんな気がしてた」
「でしょう」
未空の言葉に思わず苦笑した。
「立夏くん、理由を聞いてもいいですか?」
「決心が付いたから話してくれる気になったんでしょう?」
「聞かせて。俺達もっとリカのことが知りたいんだ」
3人の言葉に瞳を閉じて深呼吸する。
次に目を開けて飛び込んで来たのは真っ直ぐに俺を見つめる会長だった。
『大丈夫だ』
その瞳が、そう言ってるような気がした。
俺もそう思いたい。
「……俺は生まれてすぐ藤岡家の養子になりました。どう言う経緯で養子になったのか分からないけど、育ての両親には血の繋がった本当の子供もいたんです。それが年の離れた兄ちゃんと同い年のカナでした」
自分のことをこんな風に話すのは初めてだった。
だからかな。
「でも俺とカナは知らされてなかったんです。俺が…、俺だけが本当の兄弟じゃないってことを」
手が震える。
変な汗が滲む。
「それを知ったのは育ての両親が亡くなった後でした」
あの頃を思い出すといつもこうだ。
楽しい記憶も嬉しい記憶もあるのに恐怖だけが先走る。
嫌な記憶が。
『貴様があの子を殺したんだ』
思い出したくない記憶が頭の中を支配する。
『俺、外で待ってるね!』
『あ、リツ、ちょっと待っ…』
「、」
頭が痛い。
クラクラする。
目の前がチカチカして気持ち悪い。
「大丈夫か?」
その声に顔を上げると覇王4人は神妙な面持ちで俺を見つめていた。
「……大丈夫」
これくらいどうってことない。
過去の傷は癒えない。
きっと一生癒えることはないし、そんなことは許されない。
でもそれがどうした。
俺は大丈夫だ。
何があっても、この先に何が待ち受けていたとしても。
(俺は、大丈夫だ…)