歪んだ月が愛しくて2
「おい」
クイッと、横から腕を引かれた。
未空が離れたかと思えば今度は会長が俺の手首を掴んだ。
「勝手に行くな」
少し拗ねたような声。
普段は無駄に大人びた会長が何故か今は子供っぽく見えた。
「でも管理人室だか…「関係ねぇよ」
グッと、会長の手に力が入る。
「会長…」
会長は口では「行くな」と言うもののきっと俺が望めば何だかんだ言いつつもこの手を離して行って来いと背中を押してくれるだろう。
いつだって俺の意志を尊重して俺の好きなようにさせてくれた会長ならそう言ってくれるような気がした。ただガキ扱いされてるだけかもしれないけど。
「関係ないのはそっちだろう」
途端、頼稀の声が俺の思考を遮る。
「ならお前には関係あるのか?」
「あると言ったら?」
会長と頼稀のやり取りはいつ見てもヒヤヒヤさせられる。
いつもなら単純に喧嘩して欲しくないと言う気持ちだけだが今回はアゲハのこともあるから気が気じゃなかった。
「君は九條院くんの従者でしたね」
「それが何か?」
「君が立夏くんを呼びに来たと言うことは立夏くんに用があるのは九條院くんですね。一体彼は立夏くんに何の用があるんでしょうか?」
「さあ?少なくともアンタ等に関係ないのは確かですよ」
その塩対応やめてー!
本当心臓に悪いからー!
「お前が九條院に従うのは何故だ?」
「何故って、大切な主様だからですよ」
「それだけか?」
「それ以外に何かあるとでも?」
普段から刻まれている会長の眉間に更に皺が深まる。
「よ、頼稀…」
頼むからこれ以上引っ掻き回さないでくれ。
面白がってやってるところ悪いが会長達は至極真面目なのだ。
珍しいことに未空や陽嗣先輩まで真剣な顔をしていつものおふざけなんて一切ない。
理由はきっと、あれだ。
「九條院が“B2”の頭だからじゃないのか?」
ああ、やっぱり…。
アゲハの言う通りだ。
覇王はアゲハの正体に気付いている。
それを頼稀の口から言わせようとしているのだ。