歪んだ月が愛しくて2
いつか彼等の口から聞かれるとは思っていたが、まさか俺じゃなく頼稀から聞き出そうとするなんて予想外だった。
頼稀はこの状況をどうやって切り抜けるつもりなんだろうか。
「……まさか」
頼稀は口の端を持ち上げて妖艶に笑う。
「と言いたいところだけど、俺が何言ったってアンタ達は信じないでしょう?」
自信に満ち溢れた表情で覇王を惑わす頼稀に思わず喉の奥が引き攣る。
流石は頼稀様。長年アゲハの右腕やってるだけはある。
口頭術といい、度胸といい、頼稀の右に出る者は早々いないだろう。
「だったらお好きなように解釈して下さい。俺は否定も肯定もしませんから」
だからってそんな生き生きと挑発しないでくれよ、頼むから。
「……そう来たか」
「あーあ、やっぱり頼稀は一筋縄じゃいかないね」
「感心してる場合かよ」
「本当ナメた真似してくれますね(黒笑)」
「き、九ちゃんの目が笑ってない…」
「怖ぇってマジで…」
うん、マジで怖い。
「立夏」
その声が、その目が、俺をこの場所に繋ぎ止めようとする。
聞きたいことあるのに飲み込んでますって顔されても今の俺にはどうすることも出来ない。
アゲハの考えも、頼稀の答えも、俺には痛いくらい理解出来るから今は会長の求めるものはあげられそうにない。
「会ちょ…「立夏」
頼稀は俺の肩に手を置いて制止する。
応えられないなら余計なことは言うなと言いたいのか。
(早々に片付けるしかないか…)
俺の手首を掴む会長の手の上にそっと自分の手を重ねる。
「行って来るね」
「………」
予想通り会長は何も言わなかった。
会長の手がゆっくりと俺から離れて行く。
何も話せない後ろめたさから俺は一度も振り返ることなく生徒会室を後にした。