歪んだ月が愛しくて2
尊Side
風魔が立夏を連れ去った後、生徒会室は重苦しい空気に包まれていた。
自分の城でありながら最高に居心地が悪いのは挽き立てのコーヒーの香りと隣にいるはずの人物がいないからだ。
そして何より俺の手を離して風魔の元に行ったことが気に入らない。
「あーあ、頼稀に持って行かれちゃったね」
ピクッと、頬が引き攣る。
「おい、本当のこと言うんじゃねぇよ。今にも王様がブチキレそうじゃねぇか」
「本当だ。眉間の皺が凄いことになってますね」
言いたい放題言いやがって…。
立夏を連れて行かれて不満なのは俺だけじゃねぇだろうが。
気分を紛らわすためにコーヒーを飲もうと手を伸ばすがそこにはいつもならあるはずのカップがない。
それが更に俺の不快指数を上昇させた。
治まらない不快感を払拭させるために胸ポケットの煙草に手を伸ばした。
「アイツに挑発されたのは俺だけじゃねぇだろうが」
煙草を口に銜えて火を点ける。
吐き出した紫煙がゆらゆらと宙を泳ぐ。
「確かにうちの大魔王様にも喧嘩売ってくれちゃってよ。後処理くらいしてけっての」
「命知らずだよね、リカもだけど」
「ふふっ、近頃の若者は言葉遣いがなっていませんね」
「「(ブラック降臨!!)」」
九澄の苛立ちが手に取るように分かる。
気持ち悪いくらいの爽やかな笑顔が不気味で仕方ない。
「尊、貴方はどう思いましたか?」
九澄は風魔の言葉を聞いた上で俺の意見を求める。
「……九條院か」
「ええ。風魔くんはああ言っていましたが本当に九條院くんが“B2”の総長だと思いますか?」
「間違いねぇだろうな」
断言したのは確信があったからだ。
でも確証がない。煽るだけ煽って肝心なことははぐらかす。
未空の言う通り一筋縄じゃいかないとは思っていたが予想以上に風魔の口を割らすのは難しいようだ。
「俺もみーこに一票」
「俺も」
「僕も疑う余地はないと思いますが確証がありません。どうでしょう、ここは九條院くん本人に当たると言うのは」
「俺はいいと思うけど。その方が手っ取り早いし」
「まあ、本人に確かめた方が確実だからな」
「と、2人は言ってますが?」
「……好きにしろ」
正直九條院の正体そのものに興味はない。
九條院がどこの誰であろうと暴走族の総長であろうとどうでもいい。
懸念すべきことは立夏との関係だ。