歪んだ月が愛しくて2
「昨日、ある族が一夜にして壊滅した」
頼稀の声に思考が遮られる。
次第に指先の震えが治まっていく。
「族自体は少人数で最近結成したばかりのところだが、それがここ半月で同じような被害が続出している。しかもその殆どが病院送りにされるほど手酷くな」
頼稀は話題を変えた。
いや、それとも“鬼”と何らかの関係があるのか。
「犯人は大体10〜15人くらいの複数で行動している。被害者の怪我の状態から見て犯人は武器を使用している可能性が高い」
「アイツ等うちの傘下にも手出しやがったんだよ!」
「許せないね」
「……それが“鬼”と何の関係があるの?」
「被害者達の証言によると犯人は何れも手馴れていたため族か不良チームに所属する者だと思われる。交戦中は一々顔なんて覚えてないだろうから俺達も犯人捜しは諦めていたんだが、被害者達は犯人達の特徴について二つだけ覚えていた」
「二つ?」
「犯人達は複数いたにもかかわらず奇妙なことに全員同じ格好をしていたそうだ。それが全身黒い服に白髪…。まるで誰かさんを連想させるようにな」
「………」
「そして被害者の中で最も軽傷で済んだ1人がその人物について有力な証言をした」
「その犯人が“鬼”だって?」
「……いや、被害者の証言は違う」
頼稀は曖昧に言葉を濁す。
否定も肯定もしないと言うことは犯人は“鬼”じゃないのか。
そうだとしたら犯人の正体は一体…。
「そいつは全身黒い服に身を包み、頭には顔が見えないように大きめのフードを被り、そして自らを―――“白夜叉”と名乗っていたそうだ」
「、」
それは過去の汚点である忌まわしい名。
その単語に耳を疑ったと同時にアゲハが俺を呼び出した本当の理由が分かった。
「まさか、お前…」
ガタッと、咄嗟に席を立ってアゲハを睨み付ける。
「誰も君の仕業なんて思っていないさ」
「お前が学園から出ていないことはカメラの映像でも確認済みだからな」
「だったら何でこの話を俺にした?俺を疑ってるからじゃ…」
「お前にこの話をしたのは犯人の目星が付いているからだ」
「目星?」
「お前も、本当は分かってるんじゃないか?」
「………」
本能的に感じた。
あえてその名を名乗ると言うことは間違いなく犯人は奴等だ。
「―――“鬼”」