歪んだ月が愛しくて2
「ご名答」
「それも最近退院したばかりのキョウだろうね。あの事件以来キョウは君を捜しているから」
“鬼”の幹部―――キョウ。
俺を執拗に捜している男か。
「……でも、何で白夜叉を名乗る必要がある?俺に用があるなら直接俺のところに来ればいいだろう」
「“鬼”がお前を捜してるってのは前にも話したが、実際白夜叉についての情報は極端に少ない。白夜叉伝説もあの日以来ぱったりと途絶えていくら白夜叉に会いたくてもその消息すら掴めないのが現状だ」
「それに加えて君の情報は頼稀と理事長が何重ものトラップを掛けてロックしているから調べたくても手も足も出ないのさ」
「トラップ?ロック?」
「元々は理事長が仕掛けたトラップに俺が上から何重にもトラップを掛けてセキュリティーを強化したんだ」
「何で、そんなこと…」
それに文月さんが俺の情報を隠していた?
初耳だ。
何でそんなことを…。
「お前の存在を隠すためだろう」
「いいかい。君の存在は僕等の世界になくてはならない光だ。誰もが君に憧れてその背中を追い、そして恐怖した。圧倒的な力の差と鮮血に塗れた美しさにね」
「光に虫が集るのは習性だよ。でもその虫が無害のものだとは限らない。だから頼稀くんは藤岡くんの素性を隠したんだよ。藤岡くんの平穏を守るためにね」
「その証拠に藤岡くんの家族が狙われたことはなかっただろう?」
「俺の、家族を守るため…?そうなの?」
「……もしあの事件が起こらなければ俺達はそんなことしなかったかもしれない。でもあの事件は起きた。お前にとって最も絶望的な結果を残して…。それなのに奴等は再びお前の心を壊そうとしている。俺達が守って来た、俺達の光であるお前を…」
頼稀はギュッと拳を握り締める。
爪が皮膚に食い込むほどの力を込めて。
……分からない。
頼稀の真意も、その目的も。
「僕等はね、君の笑顔を奪う人間は誰であろうと許せないんだよ」
「アゲハ…」
頼稀とアゲハの言葉を疑っているわけじゃない。
ただ彼等が俺に何かを隠している以上このモヤモヤした気持ちが晴れることはなかった。