歪んだ月が愛しくて2
「……俺、マジで護衛なんていらないから」
「いらなくない。護衛の必要性についてはさっきも説明したはずだ」
「だからっていきなり護衛なんて、そんな大袈裟な」
「大袈裟?どこが?」
「全部だよ。“鬼”に狙われていつ正体がバレるか分からないからって、“B2”にそこまでしてもらう義理はない。自分のことは自分で何とかする」
「お前1人で何が出来る?また暴走するつもりか?」
「っ、……そもそも何で俺のためにそこまでするんだよ。理由も話してくれねぇくせに、“光”とか“守る”とか訳分かんねぇこと言って…」
俺が顔を背けると、頼稀は俺の胸倉を掴んでグッと引き寄せる。
至近距離にある頼稀の瞳は、誰が見て分かるほど怒りに満ちていた。
「分からないなら教えてやる。お前は俺に言ったよな、“もう自分のせいで誰かが傷付くのは見たくない”って」
「……言った、けど」
「もしお前の正体がバレたら、奴等はどんなことをしてでもお前を捜し出し、お前の大切にしてる奴等を利用して傷付けて餌にする。自分達の欲を満たすためなら何だってする奴等だ。つまりお前の正体がバレるってことは、周りの奴等を危険に晒すことと同じなんだよ」
「、」
一瞬、呼吸を忘れた。
……痛かった。
頼稀の言葉が、胸に突き刺さって抜けない。
「お前は自分のせいで周りが危険な目に合ってもいいのか?いいわけねぇよな。未だに高屋のことを引き摺ってるお前なら、何が何でもどんなことをしてでも阻止したいはずだ。だったらお前は大人しくアゲハさんが決めたことに従っていればいい。そうすれば俺達がお前を…」
「頼稀」
アゲハの声に、頼稀は言葉を詰まらせた。
「熱くなり過ぎだよ。いくら駒鳥のことが心配だからって」
「別に、俺は…」
「駒鳥も、頼稀の説明で分かってくれたかな。僕等が何故君に護衛を付けたのか」
「………」
「しかし駒鳥にも駒鳥の考えがある。当然だよ。僕のエゴ突き通すとは言ったが、僕等の考えを全て押し付ける気はない。ただ僕等の気持ちを、考えを、少しでいいから分かっていて欲しいんだ」
「……ん」
頷くことしか出来なかった。
言葉にしたら何かが出て来そうで、怖かった。