歪んだ月が愛しくて2



「―――同じだな」



不意にカナの小さな声が耳に届く。



「お前等もアイツと同じだ。自分が正しいと信じて何も疑わない。自分の歪んだ正義が正しいと勘違いして無慈悲な言葉で人の心を抉る。その言葉で相手がどう思うかも考えもしないで…」

「藤岡、くん…?」

「マジで反吐が出るわ。お前等みてぇなのを見てると」



過去の忌まわしい記憶が遠退いて行く。

カナの声に悪寒が和らぎ、背筋のゾワゾワが薄らいでいくのが分かる。



「あ?何言ってんだお前?」

「とうとう頭イカレたか」

「まあ、西川と友達やってるくらいだから頭のネジが数本抜けてても可笑しくねぇか」



カナ、もしかして…―――。



「イカレてんのはお前等の方だろう」



……知ってるの?



「知ってるか?お前等みてぇな奴を人間のクズって言うんだよ」



俺の失われた記憶の一片を。



「ふっ、ざけんな!誰がクズだ!」

「クズは西川の方だ!」

「そうだ!コイツは自分に敗因があるって分かってたくせにずっとマウンドを譲らなかったんだ!」

「俺達は間違ったこと言ってない!」



男子生徒の1人がカナの胸倉を掴んで詰め寄る。
でもそれを微動だにしないカナは心底くだらないと言った表情で深い溜息を吐いた。



「所詮クズはクズのままか…」



……ねぇ、カナ。



それは誰のことを言ってるの?

カナは何を知ってるの?



無意識にカナに向かって手を伸ばす。

そんな俺とは裏腹にカナは大きく息を吸い込んで…。















「せんせー、西川くんがイジメられてまーす」



大声を上げた。


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