歪んだ月が愛しくて2



立夏Side





翌日、クラスではある噂で持ち切りだった。



「聞いたかよ。昨日も被害が出たってさ」

「聞いた聞いた。今度は東都の天秤(てんびん)区らしいぜ」

「その前は双魚(そうぎょ)じゃなかったか?」

「しかも犯人はあの白夜叉だってよ」

「マジかよ!?」

「白夜叉って、あの伝説の!?」

「都市伝説じゃなかったのかよ!」

「バカ!あれはマジだって!」

「スゲー!本当にいたんだ!」

「ヤベーよ!超感動!俺大ファンなんだよ!」

「マジか!お前怖くねぇのかよ?」

「怖くねぇよ。だって白夜叉が喧嘩する時は相手が喧嘩売って来た時だけだから、こっちから手出さなければ無害ってわけ」

「そうそう。大方今回も喧嘩売られて返り討ちにされたんじゃねぇの?」

「でも噂によると、今回の白夜叉はヤバいって話だぜ」

「ヤバい?何が?」

「何か見境ねぇって話。この間は釘バット使ったって聞いたけど」

「その前はメリケンサックだって」

「え、あの白夜叉が!?」

「いやいや、そんなまさかっ」

「俺達のダークヒーローが…」

「所詮、白夜叉もただの戦闘バカってことだろう」

「変な期待は抱かない方が身のためだぜ」

「そうかな…」

「折角帰って来たと思ったのにな…」

「とんだ期待外れだな」



……悪かったな、期待外れで。



「言いたい放題だね」



自分の机に突っ伏して内心悪態を吐くと、頭上から遊馬の声が聞こえた。



「でも立夏くんが気にすることはないよ。犯人は偽者なんだし」

「そうそう。俺達はちゃんと分かってるからさ」

「……うん」



汐と遊馬の言葉に口元が引き攣る。
本物とか、偽物とか、そんなことはどうでもいい。尾鰭の付いた噂なんて気にする価値もない。
今気にすべきことは…、俺がやらなければいけないことはもっと別にある。


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