歪んだ月が愛しくて2
「それにしてもこんな閉鎖的空間だって言うのに、白夜叉伝説がここまで浸透していたとはね」
「やっぱりどこにいても噂って広まるもんなんだな」
「ただの怖いもの見たさだろう…」
こんなこんな閉鎖的な空間に閉じ込められているせいか、ここの生徒達は外の話題に敏感なところがある。
親衛隊のように個人を攻撃するものとは違い、善悪関係なしに噂を鵜呑みにしているから怖いもの知らずとしか言いようがない。
「それだけ有名ってことだよ」
「今でも白夜叉は俺達にとってカリスマ的存在だからね」
“白夜叉が復活した”
そんな噂が流れたのは、今日に入ってのことだった。
朝のHRが始まる前からクラスではその噂で持ち切りで、変わり映えのない噂にいい加減飽き飽きとしていた。
「嬉しくねぇよ…」
彼等の中の白夜叉像を美化したいわけじゃない。
大層な異名が付いてるが、結局はただの族潰しに過ぎない。
可笑しな妄想をされるのは迷惑だし、ましてや期待なんて以ての外だ。
俺が汐と遊馬と話していると、後ろから聞き慣れた声が段々と近付いて来た。
「どこもかしこも噂で持ち切りだな」
「ミーハー共め…」
「どうせすぐ止むんじゃない。こう言うのは最初だけって言うし」
「白夜叉ってそんなに有名だったんだ、知らなかった」
上から希、頼稀、みっちゃん、未空の声がする。
そんな4人に守られる形で背後から葵が姿を見せた。
「葵…」
その顔色を見て、昨日のことが夢ではなかったと思い知らされる。
『許せない!史くんを傷付けた奴を…僕は絶対に、絶対に白夜叉を許さないっ!』
あの後、葵の怒声に未空、頼稀、希、みっちゃんが廊下に集まって来た。
それから葵を自室に入れて、皆で理由を聞いて、兎に角葵を落ち着かせて寝かしつけた。
だからここにいるメンバーは昨日の葵のことを知っている。
そして葵の友達に怪我をさせたのが白夜叉と言うことも。