歪んだ月が愛しくて2



「……あれ、会長ギブスは?」



ふと会長の左腕に視線をやるとそこにはいつものギブスとアームスリングがなかった。
1ヶ月は絶対安静のはずなのにどうして外しているのだろうか。



「腕はもう大丈夫なんですか?」

「見ての通りだ」

「……付けるの忘れたとかじゃなくて?」

「アホか。そんなわけねぇだろう」

「なーに偉そうに言ってんだか。まだ本調子じゃねぇくせによ」

「ほざけ。お前等とは身体の作りが違うんだよ」

「皆一緒だと思いますけど」

「りっちゃんナイスツッコミ!」



不意に九澄先輩は俺の耳元に顔を近付けて小さな声で耳打ちする。



「本当はまだ完全には治ってないんですけど立夏くんが気にするから外すって聞かなかったんですよ」

「え、」

「だから立夏くんも尊のことを注意して見ててあげて下さいね。放って置くと無茶しそうですし彼は君のことになると周りが見えなくなるようなので」



そう言って九澄先輩がウインクした。
何で俺のことになる周りが見えなくなるのかは分からないが俺のせいで会長に怪我を負わせちゃったから俺に出来ることがあれば何でもしたいと思っていた。



「分かりま…「おい、何こそこそと話してる?」



すると会長が俺と九澄先輩の間に割って入って来た。



「別に貴方の悪口なんて話してませんよ」

「話してたのかよ」

「え、何で俺を見るわけ?」

「いいじゃありませんか。僕だって立夏くんと話したいんですよ、貴方と一緒で」

「俺がいつ立夏と話したいと言った?」

「そうでなければ僕の邪魔なんてしませんよね?」

「邪魔した覚えはねぇよ。それとも聞かれちゃ不味い話でもしてたのか?」

「姑根性は結構ですけど勘繰るだけ無駄ですよ。僕は貴方と違って立夏くんに対してそう言う感情は持ち合わせていませんから」

「どうだか」



……あの、俺のこと忘れてません?


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