歪んだ月が愛しくて2
不意に頼稀と視線が交わる。
「………」
「………」
頼稀は何も言わない。
でも言葉にしなくても頼稀が言いたいことは分かっていた。
『もしお前の正体がバレたら、奴等はどんなことをしてでもお前を捜し出し、お前の大切にしてる奴等を利用して傷付けて餌にする。自分達の欲を満たすためなら何だってする奴等だ。つまりお前の正体がバレるってことは、周りの奴等を危険に晒すことと同じなんだよ』
あの言葉が、頭に残って離れない。
俺のせいで周りの人達に危害が及ぶことは、絶対にあってはいけなかった。
そのために正体を隠してまで聖学に逃げ込んだと言うのに、まさか敵のアジトに自分から足を踏み入れてしまうことになるとは、やることなすこと全てが裏目に出ている。
噂にしてもそうだ。こんな山奥にまで届くとは予想外だった。
そして葵の友達が“鬼”の標的になったことも。
それが偶然か意図的なものかは分からないが、誰彼構わず街で暴れまくってることを踏まえたら葵の友達が標的になったのは偶然の可能性が高い。
ただどんな理由を並べようとも、俺のせいで関係のない人達が巻き込まれたことに変わりはなかった。
(俺は、ここにいてもいいのだろうか…)
「リカ」
ハッと、未空の声に思考が遮られた。
「どうしたの?」
「え、何が…」
未空は俺の顔を下から覗き込んで、ジッと顔色を窺う。
「……何か、リカまで元気ないね」
「そ、なことないよ。俺はいつも通りだって」
「………」
「え、な、に…?」
そんなに見つめられたら照れる…わけないけど、どうしていいのか分からない。
「元気ならいいんだ。でも俺はリカの笑ってる顔が好きだよ」
ポンッと、未空の手が俺の頭の上に置かれる。
「未空…」
まるで慰められた気分だ。
まさか未空にまでガキ扱いされるとは思わなかったが。
でも今の俺には笑う資格なんてない。
葵に、あんな顔をさせた俺には…。