歪んだ月が愛しくて2
「お前、立夏のことでまだ俺に話してねぇことがあるだろう?」
『最低限のことは話したつもりだが』
「肝心なことは聞いてねぇよ」
『何のことだ?』
「ほお、白を切るつもりか。だったら本人に確かめるまでだな」
『おい』
本当立夏のことになるとクソ甘ぇな。
チョロ過ぎて心配になるわ。
『……何が知りたい?』
「言わなくても分かってんだろう」
『………』
「お前が言いたくねぇなら無理には聞かねぇよ。立夏に確認し…『アイツにっ、アイツには……、絶対に聞くな』
普段の俺様文月からは想像も出来ない弱々しい声に一瞬だけ言葉を詰まらせた。
……でもよ。
「文月」
聞かずにはいれない。
立夏を心配しているのは文月だけじゃねぇんだよ。
「俺は興味本位で聞いてるわけじゃねぇ。ましてやアイツをどうこうしたい気持ちなんてこれっぽちもねぇよ」
スーツのポケットの中で立夏とお揃いの煙草をグシャッと握り潰す。
「お前に比べたら微々たるもんだが、俺もアイツの担任やらせてもらってアイツに関わる機会が増えてアイツの人となりは十分に分かってるつもりだ。今更アイツが誰であろうと聞いたところで何も変わりゃしねぇよ」
『………』
かつて“最強の族潰し”と名を馳せた白夜叉が復活した。
そんな噂を耳にしたのは今日に入ってのことだった。
普段なら噂程度に左右される俺ではないが、白夜叉と言えば今代の“B2”を潰した敵で、どう言うわけかやられた張本人(アゲハ)が熱心に入れ込んでいる相手だから奴のことはそれなりに調べて知っていた。
だからこそ分からなかった。白夜叉厨のアゲハが立夏に構う理由が。
アゲハは誰彼構わず手を出すような節操なしじゃない。
自分の信念を曲げることが出来ない頑固者で“蝶”のくせに蛇のような執着っぷりに俺ですら引いたくらいだ。
でも2人をイコールで繋げれば全ての説明が付く。
『……お前の、想像通りだ』
ああ、やっぱり。
それが文月の返答に対する感想だった。
不思議なことにそれ以上の感情は沸いて来なかった。