歪んだ月が愛しくて2
覇王には無理だ。
目には目を、力には力を。
“鬼”と渡り合うには、それ相応の力が必要だ。
『勿体ぶってんじゃねぇよ。言いたいことがあるならさっさと言え』
「つまり、俺達もいるってこと」
『俺達?』
「俺の可愛い後輩達もどう言うわけか立夏に骨抜きなんだわ」
まあ、理由なんて明白だけどな。
『“B2”か…』
「そゆこと。アイツ等の腕は保障するぜ。何たって俺の可愛い後輩だからな」
『説得力ねぇよ』
「そう言わずにアイツ等にも任せてやれよ。いくら立夏が心配でもお前の立場だと四六時中一緒にいることは出来ねぇだろう。その点、アイツ等は立夏の護衛を自ら買って出たらしいから、立夏が無茶しそうになったらストッパー役くらいにはなんだろうよ」
『だからってそう簡単に他人に託せるわけねぇだろうが』
「託すんじゃねぇ。お前にはお前の、アイツ等にはアイツ等の出来ることをやればいいだけだ」
『俺の?』
「考えろ。お前に何が出来るのかを」
『………』
その無言は納得出来ないのか、それとも思案中か。
もし後者だとしたら、立夏のことになると本当妥協しねぇ奴だと少し呆れた。
でも後にも先にも文月が心を乱されるのはいつだって立夏のことだけだった。
愛しの立夏を他人には任せたくねぇのが親心……いや、恋心だとしても過保護に束縛するだけが愛情じゃない。時には相手を信頼して傍観することも大切だと思うのは、俺がまともな恋愛して来なかった弊害だろうか。
『……怪我させたら承知しねぇぞ』
「お、珍しく素直じゃん」
『珍しくは余計だ』
「文月にしてはいい傾向だな」
『煩ぇよ。で、守れんのか?絶対に怪我させねぇって約束出来るのか?』
「それは立夏次第だろう」
『それが一番当てになんねぇんだよ…』
「くくっ、違いねぇ」
立夏のことだ。
無茶するなって方が無理な話か。
『お前には話して置くが“鬼”の住処はここだ』
「は?」
ここって…。
「聖楓?」
『ああ。どうやら奴等はここにいるらしい』
「らしいって…」
『風魔の情報だ』
と言うことは確かだな。
何でよりによって“鬼”がこんなところにいるんだよ。
折角立夏が転入して来たのにこれじゃあ意味ねぇじゃねぇか。
『芳行、頼みがある』
「頼み?」
「―――分かった」
俺は文月からある伝言を預かり立夏のスマートフォンを持って教室に戻った。