歪んだ月が愛しくて2
「白夜叉は酷い人間不信で有名だったんだが、傍にいることを許された奴等が何人かいたはずだ。1人は“マッドドッグ”って呼ばれてた奴。本名は分からねぇけど、性別は男で紫色の髪をしてるらしい。俺も会ったことねぇから噂程度だけどよ、白夜叉が消えてから海外に行ったって聞いたな」
「海外ですか…。それでは接触するのは難しそうですね」
「は?接触?まさか会う気だったのかよ!?」
「そうしなければ白夜叉の素性は分からないでしょう」
「そりゃそうだけど、何も会うことねぇだろう!それに会ったところで奴等が白夜叉の素性をペラペラと話すはずがねぇんだ!」
「何故です?」
「何で白夜叉が奴等を側近に選んだと思う?当時から白夜叉はゴロツキ共のカリスマ的存在でお近付きになりたいって奴は五万といたんだ。それなのに白夜叉はたった数人しか傍に置かなかった。理由は一つ、奴等が信用における人間だからだ。だからあの事件で…っ」
「あの事件?」
グッと、口元を堅く結ぶ陽嗣。
そこまで言って言葉を閉ざすとは、何かあるな。
「陽嗣、知っていることがあれば全て話して下さい。白夜叉の側近とその事件とやらは何か関係があるんですか?」
「それは…」
「今更隠しても遅ぇって」
「聞かせろ」
「……別に、隠してたわけじゃねぇんだよ。ただこの話は東都では禁句だから」
禁句?
「どう言うことだ?」
「陽嗣、僕達にも分かるように説明して下さい」
「……今から半年以上前のことだ。さっき話した白夜叉に執着していた奴が偶然にも白夜叉を見つけた。普段白夜叉は夜しか姿を現さないって噂も流れてて、見つけたのは本当に偶然だったんだ。しかも見つけたのはもう1人の側近の家から出て来るところだった」
「その側近って?さっき言ってた“マッドドッグ”って人とは別人なの?」
「ああ。その側近の名前は高屋公平。当時“百鬼夜行”の兵隊だった奴だ」
「っ、……“百鬼夜行”だと?」
「しかし、それでは…」
「ああ、そうだ。高屋は“鬼”でありながら敵を匿っていた。白夜叉を死ぬ気で捜してた幹部の意志に背いてまでな。勿論、裏切者にはそれ相応の罰が下る。でもそいつは高屋の裏切りを利用して逆に白夜叉を誘き出すことにしたんだ。そうすれば白夜叉と戦える。本気の殺し合いが出来るって思ったんだろうが…」