歪んだ月が愛しくて2
「てか、りっちゃんはどうしたんだよ?お猿が連れて来ねぇなんて珍しいじゃん」
「さっきも言ったじゃん、リカは紀田ちゃんに呼ばれたから遅れて来るって。てか、さり気なく猿って言うな!」
「確か…、立夏くんの担任でしたね」
「俺の担任でもあるけどね!」
「んなこと分かってんだよ。話止めんな」
「九澄、何かあるのか?」
「僕の記憶が正しければ紀田先生は聖学のOBで、理事長とは幼馴染みだったはず………出ました」
九澄は自前のノートパソコンを操作してある画面を開いて俺達に見せた。
そこに映っていたのは紀田芳行の個人情報だった。
「てことは、紀田は理事長側の人間ってことか。りっちゃんって紀田と仲良いわけ?」
「んー…普通だと思うけど、よく考えれば転入初日にリカにちょっかい出してたな」
「あ?」
「お、怒んなって」
「どうどう」
「宥めんな。で、九澄は紀田の何が気になってんだ?」
「紀田先生はあまり素行が宜しくないようですね」
「見たまんま」
「元ホストなんだって」
「それだけじゃありませんよ。彼は“B2”の初代総長です」
予想外の事実に驚きを隠せない。
「“B2”、だと…?」
ここでまた“B2”が出て来るのか。
九條院と風魔に続き担任までもが“B2”の関係者となると、確信が決定的なものへと変わっていく。
「紀田ちゃんが“B2”の、初代総長…?え、マジもんの不良じゃん」
「つまり、りっちゃんは“蝶”の寵愛姫ってことか」
「いつから聖学は“蝶”の住処になったんですかね」
チッと、陽嗣の言葉に思い切り舌打ちをした。
「くだらねぇ」
制御出来ない感情をどうにかすべく席を立つと、九澄が背後から声を掛けて来た。
「どちらへ?」
「煙草だ」
バタンッと、乱暴にドアを閉めて生徒会室を出た。
“蝶”の寵愛姫?
ハッ、冗談じゃねぇ。
虫ケラなんぞにやる気はねぇよ。
「……どう思います?」
「ありゃ捜しに行ったな」
「邪魔しに行ったの間違いじゃね?」