歪んだ月が愛しくて2
俺は咄嗟に会長から距離を取って紀田先生に反論する。
「ん、なわけあるかっ!」
「台詞と行動が伴ってねぇぞ」
チッと、舌打ちが聞こえた。
舌打ちした張本人は未だに紀田先生を睨み付けていた。
「会長!アンタ何してくれてんだよ!変態も大概にしろよ!俺はアンタと違うんだよ!シてぇからって誰彼構わず手出すな!てか俺を巻き込むな!」
「煩ぇから少し黙ってろ」
「いやまず先に謝れよ!俺に!」
「………」
「おい!」
「え、まさかセフ…「アンタは黙ってろ!!」
悪ノリしやがって…。
こっちはマジで言ってんだよ!
ギロッと会長を一睨みしてすれば、さも当然みたいな顔をされた。
何で?
え、俺が間違ってるの?間違えてないよね?
ド正論でしょう?
何故そこで開き直れるのかが不思議で仕方ない。
込み上げた怒りを爆発させてしまった自分が酷く虚しく感じる。
「てか、俺相手に牽制する意味あんのか?」
「牽制?」
何の?
「心当たりがねぇとでも?」
「ああ、皆目見当が付かねぇな」
「だったら、さっきのあれは何だ?」
「……何?あの程度で取り乱してんのか?案外余裕ねぇんだな」
「あ?」
「てことは、まだお前のもんってわけじゃねぇんだろう。立夏、見ての通りだ。こんな器の小っせぇ男なんてやめとけよ」
「は?やめるって、何を…」
「お前には俺みたいな大人の男の方がいいと思うぜ」
「はぁ?」
「あ、今のは文月に内緒な。マジでクビにされっから」
話の主旨が分からないことにイライラして文句を言おうとした時、またもや会長の手が伸びて来て俺の身体を背後からがっちりと抱き込んだ。
「な、に…っ」
「ここにいろ」
背後から低い声が鼓膜を犯す。
ゾクッとした感覚に大袈裟に肩が跳ねる。
「何にせよ、文月に見つかったら大変なことになってたぞ。良かったな、ここにいたのが俺で」
「……どっちにしても最悪だわ」