歪んだ月が愛しくて2



「で、王様は俺達に何の用かな?」



その“俺達”の中には俺も含まれているんだろうか。
背後から拘束されているため会長の表情が窺えない。



「俺が、お前如きに用があると思うか?」



でも機嫌が悪いのだけは分かる。



(如きって…)



教師と生徒の会話とは思えない。
仮にも、仮にも、仮にも教師に向かってその態度、流石は覇王………いや、会長だからか。



「あんじゃねぇの?あの程度で余裕失くすくれぇだからな」



そんな会長の言葉を紀田先生はさして気にする様子もない。逆に凄いな。



「コイツに何の用だ?」

「直球だな。別に立夏が誰と何してようがお前には関係ねぇだろう。お前のもんじゃあるまいし」

「………」

「ああ、分かった分かったから、そんな顔して睨むんじゃねぇよ。疚しいことなんてこれっぽちもしてないぜ。だたの進路相談だ」

「進路相談?」

「迷える子羊に救いの手を差し出すのが教師の役目だからな」



「なあ?」と言って俺に向かってウインクする、紀田先生。

だからムカつくだけだってその顔。



「まあ、間違ってはないけど…」

「………」



そんな俺の返答に会長は無言の圧力を掛けて来る。
顔は見えないけど、疑いの眼差しがグサグサと頭上に突き刺さる。



「お前がコイツに構う理由は何だ?」

「理由?」

「鏡ノ院の差し金か?それとも、お前が“蝶”だからか?」

「、」

「………」



―――“蝶”。



それが何を指しているのか、すぐに分かった。
夜の世界に足を踏み入れた者なら一度は耳にするその単語は、あるチームの略称だ。



「―――“B2”」



東日本三大勢力の一つ、“Bloody Butterfly”。

通称“B2”。



「違うか?」



頬に伝う汗。

ゴクッと、唾を飲み込む。

生温かい風のようなものが内側から襲い掛かる。



「な、で…」



俺の身体に巻き付く腕をギュッと掴んで、会長の端正な顔を見上げた。


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