歪んだ月が愛しくて2



「そもそも何で離れる気前提で話進めてんだよ。俺の話聞いてなかったのか?」

「き、いてたけど…」

「けど?」

「……っ、ち、近い!もう無理!」



俺は会長の胸板を力一杯押して何とかしてその腕の中から逃れて距離を取った。
逃れたと言っても同じソファーの上で、俺は逃がさんとばかりに会長に手首を掴まれてしまったため完全に距離を取ることは出来なかった。



「逃すかよ」

「に、逃げないからっ」



でも無理。

これ以上至近距離にあの顔は目に毒だ。

堪えられない。



「ちゃ、ちゃんと、話したいんだよ!」

「………」



そう言うと会長は不満げに眉を顰めたがそれ以上何も言って来なかった。
多分俺が話すのを待ってくれているんだと思う。
優しいのか意地悪なのか分からない。………嘘。
会長はクソが付くくらい優しい。ただ少し不器用で口下手なだけ。それでいて意外にお人好しだから心配なんだよな。



「えっと…、会長が聞きたいのは紀田先生のことだよね?」

「ああ」



リビングのソファーに並んで座る、俺と会長。
何で横並びかと言うと会長が俺の腕を離してくれないせいなのだが無駄にソファーがでかいだけあって狭くはない。
兎に角手が届く距離(もう捕まってるけど)にいるせいで会長の不機嫌オーラがビシビシと伝わって来る。
でもその対処法が分からない。
そもそもこれは俺が対処しなければいけないのだろうか。
文月さんのことならまだしも会長が紀田先生に対して不機嫌になる理由も分からないのに対処もクソもあったものじゃない。



「紀田先生は俺の担任で、文月さんの悪友で…」

「“B2”の初代総長なのは分かってる。………で?」

「で?」



え、何が?



「俺はお前と紀田の関係を聞いてんだよ」

「関係って言われても………他人?」

「喧嘩売ってんのか」



あ、間違えた。



「だ、だって、それ以外に答えようがないから…」



担任、文月さんの悪友、“B2”の初代総長。俺と紀田先生を繋ぐものはそれだけだ。
だからそれ以上の答えはあげられないし、逆に何で会長が紀田先生を警戒するのか分からなかった。



「……本当に、それだけなのか?」

「それだけだよ。寧ろ他に何があると思ってんの?」

「………」



ブスッとした表情で言われたら俺の方が納得出来ない。


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