歪んだ月が愛しくて2
「……あのさ、そもそも会長が気になってんのは、俺が“B2”かどうかってことじゃないの?」
疑われても仕方ない立場なのは分かってる。
分かってたくせに自分で自分の立場を悪くした。自業自得だ。
「俺、“B2”じゃないよ」
今更否定しても遅いが、ちゃんと話すって約束したから。
(ごめん…)
脳裏に過ぎった2頭の“蝶”に、心の底から謝罪した。
「だから頼稀達に厳しく当たんないであげて」
俺のせいで頼稀やアゲハが疑われるのは堪えられない。
「疑うなら、俺だけにして」
人が人を想う気持ちなんて十人十色だ。
だから会長が“B2”に対してどう思おうと勝手だし、俺が口出していいことじゃないのは分かってるつもりだが、でも暴走族の一括りで彼等を纏めないで欲しかった。
頼稀には頼稀の、アゲハにはアゲハの良いところがあって、出来れば会長にもそれを知って欲しいから。
でもそれが無理なら受け入れなくてもいいからちゃんと見て欲しいんだ。
会長が、彼等が、俺にそうしてくれたように。
「……他人のことばっかだな」
「え、」
会長の呆れた声に首を傾げると、会長は態とらしく盛大に溜息を吐いた。
「白樺の時も、恐極の時も、その辺のモブが人質になった時も、お前はいつも自分を後回しにして他人のことばかり気にしていた。今だって自分が疑われることよりも、風魔や九條院のことばっか気にして…。そう言うところがムカつくんだよ」
「はぁ?」
え、いきなり悪口?
喧嘩売ってんの?
「ああ、うぜぇ。思い出しただけでも腹が立つ」
会長はイライラした様子で前髪を掻き上げる。
何を思い出したのか知らないが、会長がこんな風に取り乱すなんて珍しい。
いや、俺が知らないだけか。
「何イライラしてんのか知らないけど、疑ってるなら正直に言ってく…「疑うわけねぇだろうが」
途端、会長は俺の言葉を遮った。
「気に入らねぇんだよ。自分のことなんかどうでもいいってその態度が」
「そ、なこと言われても…」
自分のことをどうでもいいなんて思ったことはない。
俺は博愛主義者じゃないし、いつだって自分が一番可愛い最低な奴だ。
俺の何をどう見たらそう思えるのか不思議で仕方なかった。
「それに、今更お前の何をどう疑えって言うんだよ。お前みてぇな不器用なお人好しバカがそんな大それたこと出来るわけねぇだろうが。自意識過剰も大概にしとけ」
「な…っ、だ、誰が自意識過剰だ!」
「自覚ねぇのか。残念だな」
「何が!?頭が!?」
「分かってんじゃねぇか」
「分かりたくなかったけどね!」