歪んだ月が愛しくて2



「立夏」



再び会長の顔が近付いて来る。
否が応でも会長の薄い唇が目に入ってしまい羞恥心が蘇る。



「ま、待って!落ち着いて!何で会長が怒ってんのか分かんないんだけど!?それにああ言うのって海外じゃ珍しくないんじゃないの?知らないけど。アゲハもどっかの国の血が混ざってるって聞いたことあるからきっとそのなご…、ん…っ」



ビクッと、固まる身体。
会長の手が腰に回され、もう片方の手が首の後ろに回された。
ただ触れるだけのキス。でもそれは角度を変えて何度も何度も降って来た。
どうしよう、息継ぎってどうやってするんだっけ。
こう言うことに関してほぼ初心者な俺は会長のペースについて行けないでいた。

ああ、頭がクラクラする。
息苦しさから生理的な涙が込み上げて視界がぼんやりと霞む。
触れ合う唇の熱が、俺の脳を痺れさせる。



「は…、はぁ…っ」



ギュッと、息苦しさから逃げるために会長の制服を掴んだ。
すると会長の手に少しだけ力が入ったのが分かった。



……無理だ。

これ以上は心臓が持たない。

自分で言ってしまった手前引くに引けなかったが、もう無理。限界だ。



「立夏…」

「、」



スッと、会長の手が俺の頬に添えられる。



ゾクゾクした感覚が背筋に走る。





飲まれたら、ダメだ。



堕ち…、





「タ、タンマ!」





堕ちて、たまるか。





咄嗟に会長の顔を片手で覆った。
こんな壁を作ったところで無意味なのは分かってる。
でも飲まれるわけにはいかない。堕ちるわけにはいかない。



すると会長は俺に顔面を抑えられている状態のまま俺の手首を掴んで指と指の隙間に舌を這わせた。



途端、鋭利で艶麗な瞳がギロッと俺を捉えた。



「待たねぇ」

「っ!?」



会長は俺の手首を掴んだまま、俺の身体を自身の胸に引き寄せて唇を塞いだ。
すぐに入り込んだ舌が優しく執拗に咥内を探る。
舌を絡められ歯茎の裏を辿られると、全身から力が抜けそうになる。



「…ふ、ぅ……んっ…」



上唇と下唇を交互に吸われ、音を立てながら小刻みに口付けられる頃にはまた息が上がっていた。



「は…ぁ…っ」



ゆっくりと離れていく唇と、交わる熱い吐息。
自分本位で屈辱的な行為のはずなのに、顔に集中した熱が引くことはなかった。
寧ろ唇から熱が伝播しているような、そんな感覚に陥っていた。


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