歪んだ月が愛しくて2
会長達のお陰で初めて文月さんとちゃんと向き合えて自分の言いたいことも言えたあの日から、文月さんへの印象が少しずつ変わり始めていた。
本当は自覚したくなくてずっと気付かないふりをしていたが、時折見せる穏やかな笑顔と優しい声にあの頃を思い出して勘違いしそうになる。
『ふーくん!お帰りなさい!』
心配なんてされたくない。
だって文月さんは俺のことが嫌いで、俺も文月さんのことが…―――。
「立夏様…」
まだ気付いてはいけない。勘違いしちゃいけない。
だって俺だけがあの頃にしがみ付いてるみたいで寂しいじゃないか。
「立夏様、私も主人から伝言を預かっております」
「伝言?何ですか?」
「一つ、用件が済んだら即座に帰宅すること。二つ、帰る前に一度連絡を入れること」
「ははっ、まるでガキ扱い」
「そうではありません。勿論、主人が立夏様を大切に思っているのは事実ですが、連絡を入れて頂きたい理由は防犯システム上の関係です」
「防犯システム?」
「現在、学園内の防犯カメラは一時的に停止させております。しかしこの状態を長時間継続させることは防犯上出来ません。そのため立夏様が帰宅する際にもう一度カメラを停止させて立夏様の姿を隠します。生徒会は勿論のこと風紀委員にも勘付かれてはいけないと聞いておりますので」
「……それ、文月さんが考えたんですか?」
「はい。あの方は立夏様のことになると必死ですから。だからこそ何事にも妥協を許しません」
あの文月さんがそこまで考えてたなんて…。
らしくないことされるとこっちが困るんだよな。
『ふーくん!』
……嫌いに、なれないじゃん。