歪んだ月が愛しくて2



「………」

「………」



哀さんと別れた俺は大人しく頼稀の後を着いて行くことしか出来なかった。
裏門なんて初めて来たから地理がよく分からない。と言うのは建前で、本当はあれ以来頼稀とまともに話していないから気まずくて仕方ないのだ。
でもだからと言ってこれから一緒に行動するのに終始無言は辛いものがあって、俺はどうしたらいいのか分からなくて頼稀と距離を置いて歩いていた。



「……何で、来たの?」

「………」



俺は意を決して頼稀に話し掛けた。



「俺のこと、怒ってるんじゃないの?」

「は?」



俺の言葉に頼稀は険しい声を出し足を止めて振り返った。
その表情からは驚愕の色が窺えた。



「いや、だってさ…」

「……俺の言った通りになったからか?」

「………」



反論することが出来ない。
頼稀の言ったことは正しかった。何もかも。



「………」

「はぁ…」



俺が頼稀と目を合わせられないでいると、頼稀は深い溜息を吐いて両手を腰に添えた。
大層呆れているんだろうな。頼稀に忠告されて逆に怒らせたばかりか、頼稀の忠告通り関係のない人達を危険な目に遭わせてしまったのだから。



「まさか被害者の中に葵のダチがいたとはな…」

「………」



その口振りからして、頼稀も葵から聞かされるまで知らなかったんだろう。



「おい、いつまで下向いてるつもりだ。こっち見ろよ」



そう言われても思うように身体が動かない。
いや、きっと頼稀の目を見るのが怖いんだ。



「おい」



責められるのが怖いんじゃない。
寧ろもっと責めて蔑んで欲しかった。



「立夏」



俺が怖いのは、俺と言う存在を否定されること。



(本当、臆病だな…)


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