歪んだ月が愛しくて2
「……怒ってねぇよ」
ボソッと聞こえた頼稀の声。
その声と言葉に思わず肩が跳ねた。
「てか、最初から怒ってねぇし」
嘘だ。
「……その顔は疑ってんな?」
「うん」
「あのな、俺が怒ったって仕方ねぇだろう。お前の聞き分けの悪さは今に始まったことじゃねぇし、その捻くれた性格も俺なりに理解してるつもりだ」
捻くれてて悪かったな。反論出来ないけど。
「でもお前は自分のことを蔑ろにする自己犠牲主義野郎だから、誰かが言ってやらねぇとお前はまた傷付くことになる。そんなこと俺は絶対に許さねぇぞ」
「じ、自己犠牲主義って…」
そんなことないと思うけど。
「だからお前が自分のことを大切にするまで、俺がちゃんと見張ってやってるんだよ。今までも、これからもな」
「頼稀…」
徐に顔を上げると、そこには少しムスッとした頼稀の顔があった。
やっぱり怒ってんじゃんと思ったけど、次第にその表情は柔らかいものに変わっていく。
「顔上げんのが遅ぇんだよ、バーカ」
そこにいたのは、俺の知ってる頼稀だった。
無愛想で、意地悪で、それでいて俺のことを誰よりも知っていると豪語する自信家な頼稀が。
「……バカって言った方がバカなんだよ」
「その理論から言うとお前もバカだな」
「人の揚げ足取るなよ。性格悪くなったんじゃねぇの?」
「元々だ」
「知ってるよ」
「あ?」
「自分で言ったんじゃん!」