歪んだ月が愛しくて2



「俺も、悪かったよ」



突然の謝罪に困惑する。



「……何、謝ってんの?」

「お前は俺の言ったことを気にしてるだろう。勿論そうなるように仕向けたのは俺だが実際葵のダチが被害に遭ったことでお前を追い詰める形になったからな」

「それは…」

「お前の危機感を煽りたかっただけなんだ。決してお前を追い詰める気はなかった。それについては反省してる」



頼稀が謝ることじゃない。
もしかして頼稀も俺と同じようにずっと気にしていたのかもしれない。
そうだとしたらやっぱり謝らなきゃいけないのは俺の方じゃないか。



「悪かった」



だって頼稀は俺のために自分が悪者になることを選んでくれたんだから。



「だから、俺にも協力させてくれ」

「協力?」

「お前に会わせたい人がいるんだ。一緒に来てくれ」



何だろう。

改まってそんな風に言うなんて。



「うん…」



ただ頷くことしか出来なかった。
今回の目的は東都の現状確認だけだったからその“会わせたい人”って人に会うのは吝かではないが、俺に合わせたいとは一体どう言うことなんだろう。



「それに、今日は満月だから…」



不意に頼稀は真っ暗な空を見上げた。
そこには頼稀の言う通り銀色に光り輝く大きな月が浮かんでいた。



「満月だから、何?」

「……いや、こっちの話だ」



意味深な言葉を残すだけ残して頼稀はそれ以上何も言わなかった。
それから頼稀の後をついて行くと駐車場のようなところに出た。



「ここは…」

「職員用の駐車場だ」

「それは何となく分かるけど、何でここに来たの?」

「その奥の単車が俺達のだ」

「は?」



そこには一般的に有名な高級車から見たこともないピカピカの厳つい車両などがずらりと駐車されていて更にその奥に複数の単車が置かれていた。
単車に詳しくない俺でも分かるほどどの単車も同様に華美な装飾・改造が施されている。



「こんな堂々と…。先公にバレねぇの?」

「理事長の許可は得ている。他の先公共も見て見ぬふりだ」

「へー」



どうやって許可もらったんだか。
まあ、大体の想像は付くけど。



「後ろ乗れるか?」

「……多分」

「初めてか?」

「いや、公平に乗せてもらったことはあるけど」



あの時はマジで死ぬかと思った。
公平の後ろにしか乗ったことないから基準が分かんないがアイツの運転はかなり荒いと思う。
いくら夜中で他の車が少ないからって一般道で180振り切るとか頭イカれてるとしか思えない。



「そうか。なら遠慮はいらないな」

「少しは手加減しろよ」

「聞こえねぇ」



そう言って頼稀は自分の単車を探してキーを差し込む。



「あ…」

「どうした?」

「………」



頼稀の愛機はカワサキKH400のグリーン。
公平の単車と色違いだった。



「……何でも、ない」



頼稀の愛機はよく手入れされているようでエンジン周りからマフラーやホイールまでピカピカだった。



「そうか…」



マフラーから轟音が響き渡る。
辛うじて聞き取れた頼稀の声に促されてリアシートに跨った。


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