歪んだ月が愛しくて2
「情報屋?」
そう言う類の連中がいるのは聞いたことがある。
でも実際にお目に掛かるのは初めてだった。
ヤエも似たようなものだがアイツは情報屋と言うより情報通の戦闘バカだからな。
すると俺の反応に今度は男が驚いた様子を見せる。
「え、頼稀から聞いてない?それで今日ここに来たんじゃないの?」
「何も、聞いてませんけど…」
ジロッと、俺と男の視線が頼稀に注がれる。
「頼稀…」
「会わせたい人がいるって言っただろう」
「言ってたけど情報屋に会いに行くなんて聞いてねぇよ」
「そりゃ言ってねぇからな」
「言えよ」
「言ったら面白くねぇだろう?」
「面白さ求めてねぇから!」
「はーい、ストップ。そんな大声出すと他の客に気付かれちまうぜ」
「気付かれるって…」
そう言い掛けて自分の格好に気付く。
「その格好でここに来るなんていい度胸してるね」
「で、ですよね…」
自分でもそう思うよ。
「まあいいけどね。ここは“B2”のシマだから」
「え、そうなの?」
「知らなかったのか?」
「知るかよ。金牛に来たの初めてなんだから」
「そう言えばそんなことも言ってたな」
この野郎、人の話聞いてなかったな。
「じゃあ改めて自己紹介しなきゃね。俺はここのマスターの結城洸。職業はマジシャン兼ここのマスター。で、裏では情報屋もやってるってわけ。宜しくね」
「こちらこそ。俺は…」
そう言って名乗ろうとした時、結城さんの人差し指が俺の唇に触れた。
「知ってるよ。勿論君が本物だってこともね」
(本物、ね…)
その言葉にスッと顔から表情が消えたことに俺だけが気付いていなかった。
「だから今ここで本名は口に出さない方がいい。誰がどこで聞き耳を立てているか分からないからね」
「え、でも…」
そう言う気配は感じない。
強いて言えば時折好奇な視線は感じるがそれだけだ。敵意ではない。
「今ここにいる客は大丈夫そうだけど用心するに越したことはないよ。最近では本物を捜しに“鬼”が来ることもあるからね」
「、」
奴等がここに出入りしている?
まさか頼稀はそれを知っていてだからここに…。
「でも安心して。君の情報はいくら金を積まれても売るつもりはないから。寧ろその逆」
「逆?」
「今日ここに来たのはお前を洸さんに会わせるためだけじゃない。洸さんから奴等の情報を買うためだ」