歪んだ月が愛しくて2



「情報を買う?でも何の…」

「洸さんには奴等の次の襲撃日時とその場所の情報を買うことになっている」

「……買うって、いくらで買う気だよ?」



今持ち合わせ少ないのに。
そう言うことは前もって言って欲しい。



「……何?」



すると頼稀は隣にいる俺の頬を指で突いた。



「お前」

「は?」



俺?



「お前を洸さんに会わせること。それが今回の報酬だ」

「はぁ?」



頼稀の予想外の返答に思わず声を上げるが、ハッと我に返って口元を押さえる。



「じゃ、じゃあ、俺に会わせたい人がいるって言うのは…」

「どっちかと言うと俺が君に会いたかったって言った方が正しいかな」

「嘘は吐いてねぇだろう?」

「屁理屈か!」

「物は言いようなんだよ」



自分で言うな。



「でもお前を洸さんに会わせたかったのは本当だ。いつかはって思ってたからな…」

「は?」

「………」



カウンターの中から結城さんの視線を感じる。
その瞳と目が合うと結城さんは何かを誤魔化すように笑って見せた。



「これで満足ですか?」

「ああ、ありがとうな頼稀。君も騙すようなことして悪かったね」

「いえ、俺は別に…」



頼稀には餌に使われたが考えようによれば俺がこの人と会うだけで奴等の情報が得られるのであれば安いものだ。



「それにしても本当綺麗な顔してるね。噂とは大違いだ」

「噂?」

「君の噂だよ。巷では君のことを“屈強な大男”とか“悪魔”とか“死神”とか色々言ってるけど、まさか実物はこんな綺麗な子だったとはね。知らなかったよ」

「………」

「だからアイツ等も余計心配なんだろうな、うんうん」



結城さんはカウンターから身を乗り出して俺の顔を下から覗き込む。
至近距離にあるその顔は文句なしに整っていて俗に言うイケメンなんだと思う。
俺達の前では終始笑顔を崩さず人懐っこさと大人の余裕って奴を見せ付けているようだが、その中に時折滲ませる胡散臭さが俺に一線を引かせていた。



「……白々しいですね」

「え?」

「俺の顔、本当は知ってたんじゃないですか?」

「……どうして、そう思うの?」

「貴方は頼稀が態々会いに来るほどの情報屋だ。つまりそれは頼稀以上の腕を持ってることになる。そんな貴方が俺の顔を知らないはずがない。まあ、俺に対して関心がなければ知らないのも頷けるけど」

「………」



俺の言葉に結城さんは目を丸くさせた。
するとそれを聞いていた頼稀が俺の横でクスクスと小さく笑った。



「意外とやるでしょう、コイツ」



意外は余計だ。


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