歪んだ月が愛しくて2



「……あの、ずっと気になってたんですけど、何でここって“Lucky Dog”なんですか?幸運の犬?」

「まんまかよ」

「英語は分からん」

「英語も、だろう」

「ぶっ飛ばすぞ」

「おーこわ」



思ってねぇだろう。

マジで一発ぶん殴りてぇ。



「確かに直訳するとそうなるね。でも俺が付けたわけじゃないから正確には分からないんだ」

「え、ここって結城さんのお店じゃないんですか?」

「今は俺の店。元は俺の嫁さんの義理の兄さんが経営してた店で、その人が亡くなってここが人手に渡りそうだったから俺が買い取って同じ名前で営業してるってわけ」

「へー…」



どうやらこの店は結城さんにとって思い入れのある場所らしい。
そうじゃなければいくら親族の店でも態々買い取ってまで続けないだろう。



「外観も内装も昔のまま。だから外見はボロいんだけど」

「確かに外見はちょっと入り辛いかも…」

「だろう。でも見て欲しい人がいたんだ。昔と同じありのままのここを。あの人達が生きた一時の幸せを…」

「一時?」



あれ、何か今の言い方って…。



「まあ、他の仕事で手一杯でリフォームする余裕がないってのが本音なんだけどね」

「………」



ヘラっと、結城さんは作り笑いを見せる。
その表情はどこか寂しげでそれ以上踏み込むことが出来なかった。



「そんなことよりも約束通りコイツを連れて来たんですから早く教えて下さいよ、奴等の情報を」

「そう急かすなって。折角有名人と会えたんだからもう少しくらいいいだろう?」

「また連れて来ますから早く」

「マジで!」



おいおい、何勝手に約束してんだよ。

まあ、こっちとしても願ったり叶ったりだけどさ。


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