歪んだ月が愛しくて2
「キョウも厄介だが“鬼”で一番警戒しなきゃいけないのはシキだ」
「シキ?」
それは初めて聞く名前だった。
「幹部の1人だ。“鬼”の情報は全てシキが管理している」
つまりシキは情報担当。
“B2”で言うところの頼稀ポジションってことは相当頭がキレる人物なのか。
「金牛に目星を付けたのもシキだろうね」
「シキがキョウに協力してるって言うんですか?」
「多分ね。どの道奴等が金牛に現れるのは間違いないよ」
「何で断言出来るんですか?そもそもその情報はどこから…」
「シキのPCをハッキングしたから」
「ハ、ハッキング!?」
「大丈夫。証拠は残してないよ」
「いや、そうじゃなくて…。ハッキングって犯罪ですよね?大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。俺そんなヘマしないから」
「だからそうじゃなくて…」
「安心しろ。洸さんはその道のプロだ。ハッキングなんて朝飯前なんだよ」
だから何をどう安心しろって言うんだよ。
何で頼稀が結城さんを信頼しているのか分かった気がする。
「で、シキのPCに残ってた情報がこれですか?」
「ああ。それもキョウのメールアドレスに情報を送った後だった」
「決まりですね」
「間違いないよ。シキはキョウの協力者。若しくはキョウを利用して何かを企んでいる」
「利用って、でも奴等は…」
「仲間?それはどうかな」
「……違うんですか?」
「違うな」
「“鬼”は薬には手を染めていないものの真っ当な族ってわけじゃない。幹部は冷酷非道。兵隊は残虐外道。血も涙もなく仲間でさえ信用していない。ここまで言えば分かると思うけど奴等の正体は腐り切った汚い族ってこと」
「汚い族…」
皮肉なものだな。
そんなこととっくの昔に知ってたよ。
奴等が公平を利用して傷付けたあの時から。