歪んだ月が愛しくて2
「え、と…」
「………(キラキラ)」
いや、そんな凝視されても困るんだけど。
少女の突然の登場に狼狽えていると、汐と遊馬が救いの手を差し伸べてくれた。
「吃驚した?」
「……した」
「驚かせてごめんね。でも俺達に内緒で抜け出すなんて酷くない?頼稀くんに怒られるのは俺達なんだよ」
「いや、これには深い訳があって…」
「言い訳なんて男らしくないよ」
「次からは一言声掛けてくれよな」
「……ごめん」
2人が本気で怒ってるわけじゃないのは分かってるが、迷惑を掛けたのは事実なのでここは素直に謝っておこう。
すると何を思ったのか、少女は突然声を張り上げて汐と遊馬に食って掛かった。
「ちょっとアンタ達!白夜叉様に向かって何て口聞いてるのよ!」
「あ、いや、俺達クラスメイトで…」
「それが何?自慢?私に喧嘩売ってんの?」
「め、滅相もないですっ!」
汐は真っ青な顔をしてブンブンと左右に首を振る。
そんな汐達のやり取りに頼稀は面倒臭そうに溜息を吐く。
「声がでけぇんだよ。他の客が逃げるぞ」
「もう逃げましたよ」
「えっ!?」
振り返って周囲を確認すると、遊馬の言う通り既に他の客の姿はなかった。
「まあ、客が掃けたのは煩いからだけじゃないと思うけど」
「私達が来たからでしょう。別に帰ることないのにね」
「でも帰ってくれた方が何かと話し易いと思いますよ」
「それもそうね。まあ、白夜叉様のご迷惑にならなければ何でもいいわ」
俺を“白夜叉”と呼ぶ少女は、一言で言うと可愛い子だ。
どこか幼さの残る顔立ちに、漫画みたいな大きな瞳と艶のある小さな唇。栗色の長い髪をリボンで二つに束ねたツインテール。瞳の色は深緑で、この場所に似つかわしくない上品で鮮やかなピンクと白のワンピースを着用していた。
いや、本当誰この子?
俺の知り合いにこんな可愛い子いないんだけど。