歪んだ月が愛しくて2
「頼稀、今遊馬が“副隊長”って呼んでたんだけど…」
「そのまんまの意味だぞ」
「まさか?」
「そのまさかだ」
つまり彼も“B2”のメンバー。
それも副隊長と言うことは汐達よりも位が上の幹部。
それにしても族の人間には見えない風貌だ。
髪は茶髪で今時って感じだが、目元が見えないように前髪を伸ばしているから顔立ちははっきりと分からない。でも雰囲気がな。それっぽく見えないんだよな。
(まあ、それもある意味才能か…)
「おい、お前も自分の名前くらい名乗れよ。コイツが不審がってるぞ」
「そ、そうだね。えっと…、初めまして伊月駿河です。“B2”の親衛部隊副隊長として姫様専属の護衛に就いています。宜しくお願いします」
「ご親切にどうも。俺は…」
「知ってます。貴方のことは“B2”の人間であればで知らない者はいませんから」
ああ、そうか…。
俺は“B2”にとって最も憎むべき敵。
いくらアゲハや頼稀達が許してくれても、俺がして来たことは決して許されることじゃない。
寧ろ許されたくない。
自分の罪はどんなことをしても決して消えることはない。
だからこそ俺はその罪を背負って生きて行くと決めたんだ。
「そう、ですか…」
狼狽えるな。
これは俺が背負うべき業だ。
「駿河」
「え?………あっ、いや、そう言う意味じゃないんです!貴方はこの世界では有名人で!それに総長や姫様の憧れの人だから、それで!」
頼稀の責めるような声色に伊月さんが慌てた様子で先程の言葉を訂正する。
本当のことだから訂正しなくていいのに…、と伊月さんをフォローしようとした時、俺の言葉は甲高い声によって遮られた。
「駿河っ!貴方、白夜叉様に向かってなんて失礼なこと言うのよ!」
「も、もも申し訳ありませんんん!」
「ひ、姫…、ちょっと落ち着いて下さいって…」
「そうですよ。副隊長もそんなつもりで言ったんじゃないんですから」
「そんなつもりってどう言うつもりよ!?」
「いや、だからそれは…」
彼女の剣幕にタジタジの伊月くんを見ていたら何だか不憫に思えて来た。
いつもこんな扱いを受けてるのかな、可哀想に。
そんなことを考えている俺の横で、頼稀は何事もなかったかのようにズズズゥーと音を立ててグラスに刺さったストローを吸ってアイスコーヒーを飲み干した。
いや、可笑しいだろう。
何で頼稀が暢気にコーヒー飲んで俺があたふたしてるわけ?普通逆だろう?
何とかしろよこれ。お前んとこのメンバーだろうが。