歪んだ月が愛しくて2
「で、姫は何でここに来たんですか?」
そう言って頼稀が彼女に尋ねる。
「さっきも言ったでしょう。アンタ達だけ白夜叉様を独り占めするのが気に入らなかったからよ」
「会いたいなら会いたいって素直に言えばいいじゃないですか」
「なっ!?」
「お姫様は素直じゃないね」
「だ、誰もそんなこと言ってないじゃない!それに前に会わせて欲しいってお願いした時はダメって言ったくせに!」
「物事には順序ってものがあるんですよ」
「順序?」
「うちは全寮制の男子校ですよ。そう簡単には抜けられないし、それに姫がいきなり会いに来たらいくらコイツだって戸惑いますからね。姫だってコイツを困らせるのは本意じゃないでしょう?」
「勿論よ」
別に困りはしないが、何でそこまでして俺に会いたかったんだろうか。
さっきの会話の中でもそれだけが分からなかった。
「あ、あの…」
すると彼女…、アゲハの妹は俺を見上げて恐る恐る口を開いた。
「ご、ご迷惑でしたでしょうか?約束もなしに突然訪ねて来てしまって…」
でも、はっきりと俺に言った。
まるで許しを乞うかのように、その大きな深緑の瞳に俺だけを映して俺の言葉を待っていた。
「そんなことないよ」
だから俺もちゃんと答えないといけない。
「でも何で俺に会いたかったの?君と会うのは初めてだよね?」
「は、初めてじゃありません!」
そう言ってアゲハの妹は声を荒げた。
その音量と必死さに俺は一瞬だけ目を瞠った。
「白夜叉様とお会いしたのはこれで二度目です」
「え?二度目?」
「初めてお会いしたのは2年前です。……白夜叉様が“B2”を相手に戦っていた、あの時でした」
「、」
ゴクッと、息を飲んだ。
まさか彼女にも見られていたのか?
あの場面を?
「あの時、私は留学中のイギリスから一時帰国しており、兄を捜して街に出ていたんです。そこで私は貴方を見つけました。貴方がたった1人で大勢もの“B2”のメンバーと戦っていたのを」
「………」
あの時のことはアゲハと頼稀しか知らないと思っていた。
いや、本人達に確認もしてないのに勝手にそう思い込んでいた。
よく考えたら汐や遊馬にだって見られていても可笑しくはないのに、そこまで考えが及ばなかった。
しかも、まさか彼女にまで見られていたなんてとんだ誤算だ。