歪んだ月が愛しくて2
ただ、これだけは言える。
彼女から向けられる感情は決して嫌なものじゃない。
「……嬉しい」
「へ?」
アゲハの妹は俺の言葉を聞き逃さなかった。
「ありがとう。俺のこと、そんな風に想っててくれて」
「っ、」
その気持ちに嘘はない。
彼女が話してくれた想いが全て本当のことかどうか分からないが、本当のことだったら嬉しいと思った。
だから俺も彼女に本当の気持ちを伝えたい。
「でも、そんなの勿体ないよ」
「勿体、ない…?」
「俺は君が想うような人間じゃない。大して強くないし、何か目的があって喧嘩していたわけでもない。ただ無意味に人を傷付けていただけ」
先のことなんて考えもせずに、ただ悪戯に力と言うオモチャを振り回していただけ。
先のことをもっとちゃんと考えていれば、あんなことにはならなかったかもしれないのに…。そんな後悔ばかりが俺を支配していた。
「そんなこと…っ」
「でも嬉しかったのは本当。だからありがとう」
「、」
妹さんの視線が突き刺さる。
でもそれ以外の言葉が見つからなくて、苦し紛れに笑って誤魔化した。
「白夜叉様…」
(誤魔化せてないか…)
でも、それ以上は踏み込ませない。
誰であっても、例えあの太陽であっても。
「てか、その“白夜叉様”ってのやめない?」
元々その呼び方は好きじゃない。
それに今は他の客がいないからいいが、安易にそれで呼ばれて正体がバレるわけにはいかなかった。