歪んだ月が愛しくて2



「図々しかったでしょうか…?」

「いや、そう言うわけじゃないんだけど、それで呼ばれるの好きじゃなくて…」

「では、立夏様とお呼びしても宜しいですか?」

「様もなしで。立夏でいいよ」

「り、りりり立夏っ!?む、むむ無理です!そんな憧れの人を呼び捨てにするなんてこと出来ません!」

「えっと…、何か勘違いしてるみたいだけど、俺って別に偉い人でも何でもないんだからね」

「いいえ!貴方は自分のことを大した人間じゃないと言いますが、私にとっては…、私達にとってはいつまでも憧れの人なんです!いくら貴方が自分自身を否定しても私は何度だって言います!言わせて下さい!貴方は私の憧れの人であり、生きる目標であり、ずっと貴方に会いたくて頑張って来たんですっ!」

「………」



ああ、やっぱりアゲハに似てる。
躊躇いもせずにそう言う小っ恥ずかしい台詞が言えちゃうところとか、見た目に寄らず結構熱血なところとか。
でも彼女がアゲハ以上に凄いのは、自分の感情を綺麗事で誤魔化すことなく、思ったことをそのままストレートな言葉でぶつけてくれるところだろう。
だから今、彼女は“B2”の副総長と言う立場にいる。
彼女には自然と人を引き寄せる何かがある。
たった数分しか話していないから大きなことは言えないが、彼女には人の上に立つ資格があるように思えた。
その証拠に皆から“姫”と呼ばれているんだろう。



「自分自身を否定しても、か…」



紀田先生にも言われたな。
でもまさか初対面の彼女にまで言われるとは思わなかった。



(本当、俺って情けない…)



「あ、すいません!私ったら失礼なことばかり!」

「謝るのもなし。分かった、もうこれ以上は言わない。様付けでも何でもいいから好きなように呼んで。でも白夜叉はなしでお願い。後さ、俺も名前で呼んでいい?アゲハの妹さんって呼ぶのも何か呼び難いし」

「勿論です!お好きなように呼んで下さい!」

「ありがとう、天羽」

「つば…っ!?」

「あ、ダメだった?」

「めっ、めめ滅相もございません!光栄です!嬉しいです!ありがとうございます、白や……立夏様っ!」

「ははっ、オーバーだな」



ありがとう、はこっちの台詞だよ。


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