歪んだ月が愛しくて2

暴走




立夏Side





俺と頼稀はビルとビルの隙間に隠れている追手の姿をこの目で確認して後、正面の出入り口から平然と店を出た。
数までは断定出来ないが、ビルの前に単車が2台止まってることを踏まえると恐らく5人程度ってところだろう。ただ今現在の数は正直どうでも良かった。問題があるとしたらこれが最終的にどれくらい集まるのかと言うことだった。
俺は顔を隠しているフードが取れないように頭を押さえながら、頼稀が運転するリアシートに乗って風を切る。



「どこまで行く気?」



エンジン音に負けないように、後ろから大きな声を出す。



「シマを出る」

「何で?」

「連中が仕掛けて来るとしたら金牛を出てからだろう。いくら“鬼”でも敵のシマで暴れたら分が悪いのは目に見えてる」

「そのタイミングで仕掛けて来るってことね」

「ああ。シマを出たら気を抜くなよ」

「分かってるよ」



気を抜くつもりはない。

“鬼”に対して手を抜く気もないが。



「それにしても下手な尾行。やる気あんのか?」

「だな」

「……うぜぇ」

「焦るな。短気は損気って言葉を知らないのか?」

「知らねぇ」

「バカ、勉強しろ」



不意にスピードが緩められ単車が止まった。
それにも関わらず追手との不自然な距離感に更に不信感が増す。
つまりこの下手な尾行は故意じゃないってことか。連中のレベルも高が知れてるな。



「天羽達、大丈夫かな…」



天羽達にはこっちが片付くまで店で待機してもらっていた。
店を出る時、天羽と汐が何か言いたそうな顔していたのを思い出す。
でも一緒に行きたいと言われても連れて行くわけにはいかないし、これ以上“B2”に迷惑を掛けたくないと言うのが俺の本心だった。



「……前から思ってたが、お前って女に甘いよな」

「は?」



何、急に…。

頼稀の言葉にキョトンとする。



「まあ、お前が他人に甘いのは知ってたが、女相手には特に甘いんだなと思ってな」

「……いきなり何を言い出すかと思ったらそんなことかよ、くだらねぇ」

「天然タラシのお前に教えてやってるんだよ。ちょっとは自覚しろ」

「自覚?」

「そう言うところ。うちの姫は純粋なんだぞ」

「意味分かん…っ」



単車が急発進する。

前方の信号は青になっていた。


< 230 / 651 >

この作品をシェア

pagetop