歪んだ月が愛しくて2
自分で言うのは癪だが、俺は小柄な体格を生かしながら敵の懐に入り込み鳩尾を蹴り上げた。
「ぐはっ!」
1人を片付けている間に、また1人が殴り掛かって来る。
たった2人にも容赦するような奴等じゃないのは経験済みだ。
でも、そうでなくちゃ困る。
だって手加減なんてされたら、間違えて殺しちゃうだろう。
「がはぁああっ!!」
……終わらない。
「ヒィッ、」
終わらせない。
「調子乗ってんじゃ、ねぇっ!」
「だから煩ぇんだよ」
苦悶の表情を浮かべながら片膝を付く敵に容赦なく踵落としをくれてやる。
あーあ、簡単に終わらせてやるつもりなかったのに残念。
「あれ、もう終わり?たった2人にこのザマ?」
「こ、の…っ」
「ナメてんじゃねぇぞクソガキがあぁあああ!!」
「そうそう、その調子」
俺の挑発に敵はバカみたいに突っ込んで来る。
向かって来た相手の走るスピードを利用して顔面に一発、後ろにいた奴に回し蹴りを繰り出し、体勢を整えて敵の顎先を右手拳の最も硬い部分で下から思い切り突き上げる。
敵はアッパーカットを食らったボクサーのように仰け反り、一声も漏らさぬまま膝から崩れ落ちた。
……まだだ。
―――もっと。
まだ、ダメだ。
―――もっとだ。
黒い髪から覗くグレーの瞳は、何かを欲していた。
自分自身でも気付かない、何かを。
ああ、ダメ、なのに…。
『「喰い足んねぇんだよォ!!」』