歪んだ月が愛しくて2
俺と頼稀はそれ以上の言葉を待つことなく素早く動いた。
手近にいた敵を増援の仲間目掛けて吹っ飛ばしてやり、仲間共々仲良く地面に沈めてやった。
「誰が誰に勝てないって?」
「誰に口聞いてんだよ、雑魚」
一瞬の内に、敵の目には恐怖が宿った。
「、」
「お、おいっ」
「や、やっちまえぇええ!!」
それを鼓舞するかのように敵の1人が雄叫びを上げる。
一斉に走り出す“鬼”の援軍。それでは先程の二の舞だと言うことが分からないのか。
(ああ、バカだからか…)
パシッと男の拳を掴むと、そのまま背負い投げしてゴミ捨て場に捨てた。
「がはっ!」
背中を強打した敵は苦しそうに咳き込むが、それを無視して顔面を蹴り飛ばす。
鼻と歯が何本か折れたみたいだが、そんなことはどうでもいい。
「ぎゃあぁああ!!」
「ぐあっ、あ、あああ!!」
どうでもいいんだよ。
「く、来んな!来ないでくれっ!」
尻餅を付きながらずりずりと後退する“鬼”。
「何それ?さっきまでの威勢は?」
無様だな。
そう思いながら敵の顔面に膝蹴りを入れる。
口と鼻から血を吐いて倒れ込んだ敵の腹を思いっきり蹴り飛ばして、近くの壁に背中を打ち付けた。
「ハッ、俺がテメーみてぇなチビに負けるはずねぇ!」
威勢のいい男が仕掛けて来た。
そうでなくちゃ面白くない。
でも…、
「チビは余計」
形振り構わず突っ込んで来る敵の拳を避けながら、膝の辺りを蹴って地面に膝を付かせ、動きが止まったところで敵の顔面に回し蹴りを食らわせた。
優に3メートルくらい後ろにぶっ飛んだ男は、ボキッと鼻が折れて口から吐血した。
どれだけ身長差があろうとも、小さい奴には小さい奴なりの戦い方がある。
それが分からない奴の実力は高が知れている。警戒するに値しない。
「この野郎っ!?」
それでも気絶せずに逆上した男は倒れた先に落ちていた鉄パイプを手に取って俺に向かって走り出す。
口から血出してんのに元気だね。
てか、痛くないの?不感症?
それともアドレナリンって奴?
あ、それともマゾとか?
あー……てことはさ、
「もっと酷くされたいんだ?」
「、」
無意識に口元を緩めて、振り落とされた鉄パイプを片手で受け止めた。
少し腕がジンジンしたが、骨は折れてないから問題ない。
「なっ!?」
明らかに驚愕の色を浮かべる男を見て、クスッと笑みが漏れた。
「受け止められねぇとでも思った?チビだから?」
「、」
「ふはっ、何その顔。ウケんだけど」
俺は目の前の男を睨み付けながら口元だけ笑って見せて、隙を見て鉄パイプを奪い取った。
「クソがっ!」
「そんなにこれ欲しいの?じゃあ返してあげるよ」
そう言って男目掛けて鉄パイプを思いっきり打ち付けた。
ボキッと、嫌な音を立てて鉄パイプが男の左腕に見事命中した。
「あ゛あぁぁあああ!!!」
男が悲鳴を上げる。
その左腕は有り得ない方向にぷらんと曲がっていた。
「あーあ、折れちゃった?俺が治してあげようか?」
「や、やめろ!こっち来んなっ!」
「ひど。人をお化けみたいに」
「や、め…っ」
「そう言う悪い子には…」
男はあまりの痛みに地面に蹲り、心底怯えきった目で俺を見上げた。
「お仕置きだ」
ゆるりと口角を上げて、男の鳩尾を蹴り上げる。
「ぐっ、がああ、ああっ!!」
男は腹部を押さえながら口から汚物をぶちまけて気を失った。