歪んだ月が愛しくて2
頼稀が言う。
「テメー等の後ろに黒幕がいるのは分かってる。黒幕の狙いは何だ?何故白夜叉を狙った?」
「し、知らねぇよ!俺達は何も聞かされてねぇんだ!ただ白夜叉の格好をして街で暴れろとだけ…、本当だ!」
「俺達はただキョウさんに言われて仕方なくやってただけだ!」
ピクッと、顳顬が動く。
……仕方なく?
「そ、そうだ!実際俺達はあの時のことだってよく知らねぇんだ!何も悪くねぇんだよ!」
「あれはキョウさんが勝手にやったことだろう!」
「それに悪いのはアイツだろう!高屋が、俺達を裏切ったから!」
その名前に思わず肩が跳ねる。
「そうだ!高屋さえあんなバカなことしなけりゃあんなことにはならなかったのによ!」
「俺達は裏切り者に制裁を与えただけじゃねぇか!それの何が悪いんだよ!」
「キョウさんが必死になって白夜叉を捜してたって言うのに、高屋は俺達を裏切って白夜叉に寝返ったんだぞ!俺達には仲間面しといて裏では白夜叉を見つけられない俺達を嘲笑ってたんだ!」
「全部アイツが悪いんだ!俺達を裏切ったアイツが…、高屋が全部悪いんだよっ!」
あくまで自分達には非がないと開き直る“鬼”を見て、俺の中の何かが沸き上がる。
でも、この感情の名前が分からない。
それなのに沸々と煮え滾るような感情が、俺の中で暴れ出す。
―――力を解放しろ。
―――本当のお前を曝け出せ。
解放?
そんなことしたら、また…―――。
『大丈夫だ』
「、」
……ダメだ。
それだけはやっちゃいけない。
そんなことしたら、また俺は…、
必死に抗う。
その何かに従ってしまえば、俺はまた大切なものを失ってしまう。
嫌だ。もう嫌だ。
もう何も失いたくない。
―――奪え。
―――お前は死神なんだから。
その声は甘美な誘惑のように俺を深い闇へと誘おうとする。
かつての自分がその声に従ったように。
「……テメー等言ったよな。あの事件は俺が逆ギレしたせいで起きたって」
「っ、だ、だったら何だよ!」
「本当のことだろうが!」
(……そう、かもしれない)
元の原因は俺にある。
そして見境なく暴れまくったのも俺だ。
でも、それだけ?
本当に?
「あー…後何だっけ?アイツが“仲間面しといて裏では…”とかも言ってたな」
「だ、だから、それが何だって言うんだよ!」
「今更なかったことになんか出来ねぇんだよ!」
なかったことになんか出来ない。
そんなの、当たり前だ。
「なかったことにはさせねぇよ」
ゾクッと、背筋が凍る声がする。
それが自分のものだと気付いたのは、後のことだった。
あれが逆ギレ?
ハッ、そんな可愛いもんかよ。
『なーに変な顔してんのさ?俺達もう仲間っしょ!』
何も悪くない?
大切なものを無惨に踏み躙られて、ボロボロにされて。
『…ごめん、シロ……』
そのくせ仲間面しといて、だと?
……ふざけんな。ふざけんなよ。
「テメー等に…、アイツを虫けらのように扱ったテメー等なんかに、アイツの仲間を語る資格はねぇんだよっ!!」