歪んだ月が愛しくて2



それから暫く走って学園に到着した。
職員用の駐車場に進入したところで、理事長の秘書が待っているのに気付いた。



「お待ちしておりました」



既に時刻は朝方の4時。
この時間ならまだ他の生徒も起き出してないはず。
これなら誰にも気付かれずに立夏を部屋に連れて行ける。



「……遅くなりました」



そう言えば電話するのを忘れてたな。
まあ、俺の単車に取り付けた発信機で居場所は分かってたんだろうが。



「立夏様、お疲れ様でした」



はいはい、俺にはないわけね。
全くこの人といい理事長といい、本当立夏大好きだな。
どっかのバ会長も負けてないけど。



俺がいつもの定位置に単車を停めると、立夏は無言でリアシートから下りて秘書に会釈する。



「立夏様…?」



それを不思議に思った秘書は立夏の顔を下から覗き込むと、ギョッとした表情で顔を強張らせた。



「立夏様、それは…」

「安心して下さい。それは立夏のじゃありませんから」



それだけ言うと秘書はすぐに理解したようだった。
秘書はスーツのポケットからハンカチを取り出して、立夏の顔に付いた返り血を拭き取ろうとする。でも立夏はそれを手で払い除け、高等部の方に向かってスタスタと1人で足を進めた。



「立夏?」

「立夏様、どちらに…」



でも立夏は何も答えない。
まるで俺達の声なんて聞こえてないみたいだ。



「……おい、立夏」



可笑しい。
立夏の様子が明らかに変だった。
力を解放した時の立夏とはまた違う。



血の気の引いた、白い顔。

微かに震える、小さい身体。



「立夏、お前、何でそんな…」



怯えているんだ?















「―――リツ」



そんな時、俺達だけの空間に第三者の声が響き渡った。


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