歪んだ月が愛しくて2
それから暫くして葵とみっちゃんは教卓に戻り司会を続けた。
クラスでの協議の結果、障害物競争には汐と遊馬、借り物競争には俺と未空と葵、パン食い競争には未空と汐、100メートル走には希、そしてクラス対抗リレーには俺と未空と頼稀と汐が出場することになった。
「んじゃ、体育祭の種目はこれで決定な」
しかも何の罰ゲームかリレーのアンカーになってしまった。
「マジかよ…」
黒板に書かれた文字にがっくりと項垂れると更に紀田先生が追い打ちを掛ける。
「目標は優勝一択。更に特別賞がゲット出来れば尚良し。そうすれば俺の給料アップも間違いなしだ」
「結局は自分のためかよ」
「テストの時はS組にいいところ持っていかれたからね」
「そもそも頭でSに勝てるわけないじゃん。何のためのクラス編成だよ」
「いいか、お前等気合い入れて行けよ。特に立夏はアンカーだからな。クラスの命運はお前に懸かってるぞ」
「……最悪」
そんな俺とは裏腹に未空達の反応は真逆だった。
「頑張ってね立夏くん!僕も応援してるから!」
「藤岡くんなら絶対勝てるよ!俺は信じてる!」
「汐が信じても何も変わらないと思うけど」
「ま、気楽にやろうぜ」
「俺がリカにバトンを繋ぐからね!」
「いや、でも…」
俺にアンカーなんて務まるだろうか。
リレーは小学校の時にやったことはあるが人より体力があるだけで特別足が速いわけじゃないのに。絶対未空の方が足早いだろう。新歓の時も余裕そうだったし。
すると未空達に便乗したクラスメイト達が一斉に声を上げる。
「藤岡くんなら大丈夫だよ!」
「そうそう。もっと自分に自信持ちなよ」
「俺達は選手じゃないけど藤岡くんの防衛隊員として精一杯応援するからさ」
「よーし!そうと決まれば応援団作ろうぜ!」
「いいなそれ!」
「賛成!」
「いや、何もそこまでしなくても…」
てか俺そっちのけで勝手に盛り上がらないでよ。
俺だけ置いてかれて寂しいじゃん。
「俺達だって藤岡くんのために何かしたいんだよ」
「え…」
俺のために?
「何たって藤岡くんには俺達の代表として走ってもらうんだからさ」
「藤岡くんだけに頼りっぱなしって言うのも格好悪ぃしな」
「俺達も一緒に頑張るからさ!皆で優勝しようぜ!」
「………」
何でそこまで…。
たかが体育祭なのに何熱くなってんの?
でもそんな風に茶化すことは出来なかった。
皆の雰囲気が、真摯で誠実な言葉が、俺の口元をギュッと固く閉ざした。
ポンッと、頼稀の手が肩に乗る。
「だからお前しかいないって言っただろう?」
「……ドベでも文句言うなよ」
「ああ。でもそんな結果にはならねぇよ」
「どうかな」
そこまで言われたらもうやるしかない。
どんな結果になっても最後まで走り切ってやる。