歪んだ月が愛しくて2



それにしても、



「アイツのどこが可愛いんだか…」

「アイツ?」

「九澄」

「ぶぅっ!」

「テメッ!汚ぇんだよ!」



俺の発言に陽嗣は口に含んでいた酒を勢い良く吹き出した。



「げほっ!げほっ…、お前、何つーこと言うんだよ!」

「本当のことだろうが」

「だ、誰が九澄のことなんか…っ」

「今更誤魔化しても遅ぇんだよ。この俺が気付いてないとでも思ったか?」

「、」



気付きたくはなかったがな。



「き、気付いてたって、いつから…」

「中3」

「なっ!?」



陽嗣は顔を赤くしたり青褪めたりと忙しない。
普段は態とおちゃらけて見せて仮面の下の本心を隠しているくせに、こう言う時は素直と言うかバカ正直と言うか…。仮面もクソもあったものじゃない。



「なっ、な、お前…っ」

「騒ぐな。別にお前等の性事情なんかに興味はねぇよ。ただ立夏や猿に気付かれたくなかったらもっと上手くやることだな」



まあ、未空は気付いてるだろうがな。
伊達に4年も一緒にいるわけじゃないと言うことだ。
それに未空の直感は侮れない。目に見えるものしか信じない主義の俺だが、反対に未空は目に見えないものにこそ敏感に反応するところがある。この俺ですら何度驚かされたことかしれない。



(繊細、とも言えるが…)



「う、上手くって、別に俺達は付き合ってるわけじゃ…」

「ああ、セフレか」

「、」



ビクッと、陽嗣の肩が跳ねる。
図星を突かれた後ろめたさからか、それとも見たくない現実にぶち当たった衝撃か、先程まであたふたしていた陽嗣の表情が次第に険しいものへと変わっていく。



「……別に、お前には関係ねぇだろうが」

「図星突かれて拗ねるとかガキかよ」

「うっせーな!仕事のことならまだしもプライベートのことまでお前に指図されたくねぇんだよ!大体お前に迷惑掛けてねぇんだから一々口挟むなよ鬱陶しい!お前は俺の母ちゃんですか!?」

「ふざけんな、誰がお前の母ちゃんだ」

「だったら俺のことは放って置けよ!うぜぇんだよ!」



そう言って陽嗣は飲み掛けの酒を一気に流し込む。
ガンッと、空のグラスをテーブルに打ち付けて苛立ちを露わにする。



「お前等のことに口出すつもりはない」

「なら、もうこの話はいいだろう。酒が不味くなる」

「口出すつもりはなかったが、これだけは言って置く。後で後悔しても遅ぇからな」

「………」

「またアイツに八つ当たりしてみろ。次はねぇぞ」

「チッ」



陽嗣は俺と視線を合わせることなく、舌打ちだけを残して無言のまま席を立ちカウンターへと移動した。
つまりこれ以上は踏み込むなってことか。



「……分かり易い奴」



考えてることがすぐに顔に出る。
あれで俺の家来が務まると思っているとしたらとんだピエロだな。


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