歪んだ月が愛しくて2



俺と陽嗣は急いでクラブを出て、女達が白夜叉を目撃したと言う場所に向かって走っていた。
そこへ向かっている途中、一箇所だけ人混みが出来ている場所が目に留まった。



「何だこりゃ?スゲー野次馬の数だな」

「チッ」



陽嗣は野次馬の1人に話し掛ける。



「なあ、これって何の集まり?」

「向こうの裏路地で喧嘩だってよ!」

「それも白夜叉と“鬼”だってさ!」

「っ!?」



途端に陽嗣の顔色が変わる。



「ど、う言うことだよ?何でここに“鬼”が…」

「………」



双児区は“B2”のシマだったはず。
そっち関係に詳しくない俺でも知ってるほど東都では有名な……いや、常識とも言える暗黙のルール。
ただ分からないのは、敵であるはずの“B2”のシマで何故“鬼”が好き勝手やっているかと言うことだ。



「……行くぞ」



ここにいても仕方ない。
気になったことは自分の目で確かめないと気が済まなかった。



「退け」



人混みを掻き分けて先に進む。
ミーハー根性剥き出しの外野共がギャーギャーと喚き散らすが、俺はそれらを全て無視して足を進めた。
何人もの人混みを押し退けてやっと先頭に出た時、派手なエンジン音と共に裏路地から1台の単車が現れた。
グリーンの単車には2人が乗っていた。その2人共ヘルメットをしていなかったため運転手の顔がよく見えた。



「風魔…?」



何故、風魔がここに…。

シマの見回りでもしていたのか。



そう思ったのも束の間、風魔の後ろにいる人物を見て目を疑った。
その人物は全身黒一色に身を包み、大きなフードで顔を隠すように覆っていた。
しかし次の瞬間、強い風と共に顔を覆っていたフードから見えたのは、血のように鮮明な赤だった。



「、」



顔に飛び散った返り血に、爛々と輝く深紅の瞳。

その姿はまるで血に飢えた夜叉のよう。



でもその顔を、その瞳を、俺は知っている。



見間違えるはずない。










「立夏…」


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