歪んだ月が愛しくて2
「なーにが愛しのシロちゃんだ。玉砕した挙句、病院送りにされたくせによ」
「俺は一途なんでな」
「お前も懲りねぇな…。次は本当に殺されるぞ」
「殺し合い上等。何のために白夜叉の真似して族潰しなんかやってたと思ってんだ。殺される覚悟は出来てんよ」
『ああ、そうだ。高屋は“鬼”でありながら敵を匿っていた。白夜叉を死ぬ気で捜してた幹部の意志に背いてまでな。勿論、裏切者にはそれ相応の罰が下る。でもそいつは高屋の裏切りを利用して逆に白夜叉を誘き出すことにしたんだ。そうすれば白夜叉と戦える。本気の殺し合いが出来るって思ったんだろうが…』
キョウの言動からして、以前陽嗣が話した内容に間違いはないのだろう。
ただ疑問が残る。いくら白夜叉が“最強の族潰し”と言われ、数々の武勇伝を残しているからと言っても、何故そこまで白夜叉に拘る必要がある。ただ喧嘩が強い奴なら腐るほどいるはずだ。
俺はキョウがそれほどまでに白夜叉に固執する理由が分からなかった。
「ただ、簡単に殺されてやるつもりはねぇけどな」
唯一はっきりしているのは、この男に対する嫌悪感だった。
初対面だと言うのにここまで不快にさせてくれる奴は中々いない。
「ところでよ、その本人は見てねぇか?」
「、」
グッと、思わず身体が硬直した。
あの時の立夏の顔が脳裏に過ぎる。
「はぁ?見てるわけねぇだろう。俺達だってさっきここに来たばっかなんだからよ。てか、遠目でしか見たことねぇのに誰が白夜叉かなんて分かんねぇよ」
「あははっ、違いねぇ。なら誰でもいいからこっから出て来た奴を見なかったか?」
「だから見てねぇって」
陽嗣は呆れた表情で平然と答えた。
だが、俺は違う。
心当たりがあり過ぎる。
「アンタは?」
「………」
男達が揃いも揃って昇天している理由と、ここから出て来た立夏を結び付けることは簡単だ。
でもまだ確証がない。本人に確かめるまでは下手なことは出来ない。
「知らねぇな」
それに立夏とこの男を会わせたくなかった。
例えそれがつまんねぇ嫉妬だとしても。
「へー、じゃあ何か分かったら教えてくれや」
それだけ言うと、キョウは俺達に背を向けて歩き出した。
(……誰が教えるかよ)
その後ろ姿に、内に溜めていた感情を吐き捨てた。