歪んだ月が愛しくて2
「キョウ」
ピタッと、キョウは陽嗣の声に動きを止めた。
「……お前、いつまでこんなバカなこと続けるつもりだ?」
「バカなこと?」
「お前だって分かってんだろう。こんなことして何の意味がある?ただ白夜叉に会いてぇだけなら他にもっとやり方があったはずだ」
「ハッ、オメーは相変わらず甘ぇな。“覇王”なんて呼ばれるようになって更に拍車が掛かったんじゃねぇか?」
「お前こそ“東日本最強”の名が聞いて呆れるぜ」
「腹の足しにもならねぇ肩書きが廃ろうが傷付こうが痛くも痒くもねぇよ」
「……あのトップ様は、このこと知ってんのか?」
「さあな。退院してからあの仏頂面を拝んでねぇから今頃どこにいんのかもフメーよん。もしかしてその辺で野垂れ死んでたりしてなぁ?」
「よりによってお前の独断かよ…」
「ククッ、そいつはどうかな」
「あ?お前以外に白夜叉に興味持ってる奴なんていねぇだろうが」
「それがそうでもなかったみたいよ。本当シロちゃんってば嫉妬しちゃうくらいモテモテなんだからん」
「……お前が表に出てるってことは、まさかアイツか?」
ニヤッと、キョウはでかい口を歪めて犬歯を剥き出す。
その姿は、まるで獣。
狂ったような野獣の哄笑に眉を顰める。
これが“百鬼夜行”の幹部、―――キョウ。
(とんだイカレ野郎だな…)
Prrr…。
そこにキョウのスマートフォンが着信を知らせる。
キョウは電話に出ることなくディスプレイの表示を見てこう言った。
「おっと電話だ。……ああ、コイツはまじぃ。そろそろタイムオーバーだな」
「おい、まだ話は終わってねぇぞ。お前達は一体何を…」
「安心しな。まだ事を起こすつもりはねぇよ。……そうだな。あの日と同じ、夏になったら始めようじゃねぇの」
「、」
陽嗣は何を思い出したのか、明らかに反応を見せた。
それを見逃さなかったキョウはニィッと口元を歪めて笑った。
「楽しい楽しい、殺し合いをよォ」
ゾワっとするような冷たい声を残して、今度こそイカレ野郎は俺等の前から完全に姿を消した。